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 太一のことは、嫌いじゃない。むしろ、好きだ。こんな風によくヤるセフレになって、もう2年くらい。素の僕も、仮面を被っている僕も、不自然なくいられる居心地のいい場所。
 太一と一緒にいれば、この不毛な恋をやめられるのだろうか?
 宗一郎への気持ちを忘れられるのか?

 その次の日、光くんが生徒会室に遊びに来ていた。総一郎の弟の賢二くんと一緒に。圭吾の膝の上に座っている光くんを、宗一郎は見ていた。

 またあの顔。
 あの甘い顔。


「あぁー光くんたら圭ちゃんの膝に座ってるっ! かーわいいっ。じゃあ僕は宗ちゃんの膝にすーわろっとっ」

「はぁ!?」


 僕は宗一郎の膝の上に逃げられる前に素早く座った。宗一郎は光くんの方をチラチラ見て、とても焦っている様子だ。こんなに焦ってる宗一郎は初めて見た。うろたえて、年相応の表情も見せる。

 なんだ。宗一郎は何も完璧なんかじゃない。……あぁ、光くんも、小さい子供なだけじゃないんだね。光くんのそんな顔、初めて見たよ。


「おい、幸介。ふざけるな。降りろ」


 なんだよ。両想いなんじゃん。
 光くんも、宗一郎のことが好きなんだね。


「ねぇ見て、宗ちゃん」

「なんだ?」

「光くん、始めはただ驚いた表情だったけど、今は傷ついたみたいな顔してる。宗ちゃんが僕にとられたのが気に食わなかったのかな?」

「なに言ってるんだ、そんなわけ……」

「ね? あの兄弟、似てない似てないと思ってたけど……表情は似てるんだね」


 あの自分の大事なものが奪られた時の悔しそうな顔。本当そっくり。


「当然だろう。血の繋がった兄弟なのだから」

「じゃあ僕はもう帰ろうかな。このままじゃ光くん泣いちゃうかもしれないもんね。じゃあねっ」

「おいっ」


 僕は宗一郎の膝から飛び退いて、そのまま生徒会室から出た。

 ……あぁ、なんかふっきれたかも。あの膝は僕が座っても居心地が悪いだけだ。宗一郎の身体は、桜井兄弟のためにあるものなんだ。そんなの分かってたことなのに、見ない振りをしていただけ。

 ……じゃあねっ、宗ちゃんっ。
 ブリッコな僕はやめないけど、宗一郎を想う僕とは、もうお別れ。結局、本人には伝わることなく終わったけれど……悪くはなかった。

 楽しかったよ。


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