09




「幸ちゃん、俺と付き合うの考えてくれた?」

「バーカ。寝言は寝て言え」

「俺、本気なんだけど」

「そんなに俺のケツは気持ちいーか?」


 煙草に火を付けながら、意地の悪い顔で言った。


「それもあるけど……俺、幸ちゃんが好きだって言ってるじゃん」


 太一が困った顔をしながら、灰皿を僕の近くに置いて言った。


「お前、他のセフレにもそんなこと言ってんのかー? 他の奴には通じても俺には通じねーぞ」

「セフレなんかいない」

「はぁー? お前中学ン時から遊び人で有名じゃん。大体、1年も生徒会で一緒だったから知ってんだぞ、俺は」

「それ中3の時の話でしょ。幸ちゃんとできるよーになってからは他の奴なんかとヤってないし」

「そんなに俺のケツは気持ちいーか」


 さっきと同じセリフを、灰皿で煙草をもみ消しながら、断定的に言った。


「だからそれもあるけど……俺、幸ちゃんが好きなんだって」


 太一がさっきと同じようなセリフを、灰皿を元あった場所に戻しながら言った。


「マジで言ってんの、お前。キャラじゃねーなぁ」

「……俺、マジだから。今度こそちゃんと考えといて」

「わーったよ。てか付き合ったって今までとすること変わんねぇじゃねぇか」

「変わるよ。……俺、他の奴の代わりにされんのはもう嫌だから」

「お前……」

「完全にふっきってから俺のとこに来いとまでは言わない。けど、俺に抱かれるときだけは、俺のことだけ考えてて欲しい。あとフラれる気もないから。いつまでだって待つし。……それまでは都合のいいセフレでもいいよ」

「……太一」

「エッチの時にも、そうやって俺の名前、呼んで……?」

「ワリ……俺、部屋帰るわ」

「…………」


 僕が手早く制服を着直し、太一の寝室から出ようとしたところで、その間ずっと無言だった太一が、僕を呼び止めた。


「幸ちゃんっ」

「……ん?」

「また来て?」

「……うん」


 一度も太一の顔を見ずに、部屋を出た。


「……どーすっかなぁー」


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