03




 2人でしばらく歩いていると、見るからにガラの悪い男達5人に囲まれた。


「よぉ……今日は可愛いオトモダチ連れてるじゃねーかよ。こないだの借り返させてもらうぜぇっ」


 そう1人が叫ぶと、一斉に殴りかかってきた。
 僕は幼稚舎から宝生学園に通っている。自分が自分より体の大きい男から性的な対象として見られることを自覚してから、柔道や護身術を習っていた。そのおかげで、自分にかかってきた2人をすぐに倒すことができた。

 自分の方を片付けたあと、連れの方を見るとそちらも、もう3人倒していた。そして、威勢良く叫んでかかってきた奴の顔を踏んでこう言った。


「お前ら、もう俺にかかってくるな。弱いんだからな」

「ぐ……っ、てめぇ! 何者だっ?」

「何者? そうだな……キヨとでも名乗っておこうか」

「キヨ、覚えてろ! この借りは必ず……」

「あぁ覚えておこう。いつも同じことしか言えない奴、とな。……行くぞ」

「お、おぅ」


 しばらく歩いていると、同じようにケンカをふっかけられ、同じようにキヨと名乗っていった。

 そして、4・5回それが繰り返されたあと、案内されるままにカフェに入った。


「いらっしゃい、圭吾君」


 カフェの店主であろう物腰の柔らかそうな人が微笑んで言った。見た限りでは、店内に客はいなかった。


「亮さん、俺、キヨって名乗ることにしたんだ。これからは、そう呼んでくれ」

「そう、わかった。注文は?」

「アイスティー。お前は?」

「……じゃあ、俺も同じやつ」

「了解。すぐ持って行くね」


 圭吾と呼ばれたその人物は、『2階の部屋にいつも行くんだ』と言って一般客が行けそうにない2階へズカズカと上がっていった。

 階段を上がった正面にある部屋に入り、電気を付けて、テーブルを挟んで向かい合わせに置かれたソファに、それぞれ座った。


「今日は悪かったな。おかげで助かった」

「お前、俺に声掛けたのそのためだったんだろ」

「まぁな。前に街へ来た時にさっきの奴らとやり合ったから、今度街へ来た時に出くわせば仕返されるだろうと思っていた。こんなに会ってしまうとは思わなかったがな」

「お前、何がしたいんだ?」

「さぁ……強いて言うなら、暇つぶし、かな」

「暇つぶし?」


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