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「……おい、泣いてんのか……?」

「……俺っ、欲求不満であんなことしたんじゃねーよ。ナルチャンだから、ナルチャンが好きだから……好きならやっていいって訳じゃねーけど……、どーでもいー奴でいんの、辛いんだよ。ちょっとでもいーから……俺のこと見てくれよ……っ」

「俺が好きってお前……付き合ってる奴いるじゃねーか」

「いねぇよ……いる訳ねぇじゃん……。もう3年も右手が恋人だよ、チクショー……」

「じゃあ、お前、原田はなんなんだよ?」


 俺は急に出てきた名前が分からなくて、やっと顔を上げ、少し離れた場所にあるソファに座っているナルチャンを見た。
 涙でグチャグチャな顔で。


「原田……? って誰?」

「は? お前の彼氏……つか、彼女? ……だろ。お前の親衛隊の隊長の」

「あぁ、その原田……。付き合ってねぇけど、そんな奴と」

「何言ってんの、お前?」

「ナルチャンこそ、何言ってんの?」

「え? いや、だって付き合ってんだろ? 原田と」

「だから付き合ってねぇって。大体、集会でしか話したことねぇ奴と何で付き合うんだよ」

「……それ本当か?」

「何で俺が嘘付くんだよ。ナルチャンこそ、何でそんな勘違いしてんの?」

「原田が……本人が言ってんだよ。俺が授業しに行ったらいつも聞こえてくるぜ? 『昨日は銀次様と何回ヤった』だの『銀次様ってばヤキモチやき』だのってよ」

「はぁ?」

「こっちが、はぁ? だっつの」

「いや、こっちこそ、はぁ? だって。なんだよ、それ。あいつまさか妄想癖でもあんの?」

「……嘘、なのか?」

「当たり前だよ。俺、3年も恋人いねぇっつってんじゃん。ずっとナルチャンだけだよ」

「……本当か?」

「俺はナルチャン好きだってずっと言ってんじゃん。何で信じてくんねーの?」

「だってお前、原田が……」

「そっちが嘘だよ! 原田って何組? 今度文句言ってくるわ。親衛隊もやめさせる」

「……お前、マジで俺のこと……」

「好きだよ! 好きじゃなかったら役員になんかなってねぇ! 毎週会いに来たりなんかしねぇ! ……泣いたりなんか……しねぇよ!!」

「……寺門、おい、また泣くなよ……」


 ナルチャンがソファから立ち上がって、俺の前に来てくれたけど、俺はまた下を向いて泣いていた。床に涙がポタポタと落ちた。


「頼むよ……俺を見てくれよ。好きなんだよ……。ずっと前から……好きだったんだよ……っ」

「分かった、分かったから、泣き止め。……ほらハンカチ貸してやるから」


 泣いた顔を見られたくなくて下を向いたままでいると、ナルチャンが俺の顔を上げさせて、涙を拭いてくれた。


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