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光様の髪を梳きながら鳥が啄むようなキスをする。
「んっ……そ、ちゃ……んんっ」
柔らかい唇。可愛い声。あぁ……でも、これ以上は犯罪だ。
唇を離し、最後に頭を撫でる。
「……私はあなたのことをずっと想っていました。私の心は、あなたのものです。今までも、これからも」
「じゃあ、ぼくも……」
「しかし、あなたを私のものになどするつもりはありません」
光様の言葉を遮ってキッパリと言った。光様の顔が悲しみで歪んでいく。そんな顔をさせたい訳じゃないのに……。
「どうして……? チューしてくれたのに」
「私はあなたの家に仕える者です。あなたのお兄様の執事です。分かるでしょう?」
「……わかんない」
もうその目には涙がいっぱいに溜まっている。
「光様……、キスをしたことはお忘れください。私がどうかしていたのです。申し訳ありませんでした」
「やだ! なかったことになんかしないっ!」
ついに涙をこぼす光様。私の服の裾を力いっぱい握っている。
「光様……」
「やっと、やっとそーちゃんとすき同士になれたのにっ……うぅっ、うぇ〜」
「泣かないでください。光様……泣かないで」
「そーちゃんがすき。うっ、うっ……だいすきなのっ」
あぁ、もうどうすればいいんだ。……いや、どうすればいいかは分かっている。泣いている光様を振り払えばいい。そんな風に想われても困ると言えばいい。
ただ、私がそんなことをしたくないだけだ。この小さな手を取って、泣かないでと優しい声で言ってあげたい。小さな身体を抱きしめて、愛していると光様が飽きるまで囁いてあげたい。
私だって、求めて求めて、求め続けてきたものが今、この手の届くところにあるんだ。
手に入れたい。自分だけのものにしたい。
この手も、泣き顔も、声も……笑顔も、私だけのものに。
「そーちゃん……すきなの……」
「光、様……」
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