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「あ〜グラタンのにお〜い!」

「えぇ。もうすぐ出来上がりますよ。宿題を終わらせたら2人で食べましょう」

「は〜い! 漢字ドリルおわったんだよ〜。そーちゃん本読み聞いて〜だれかに聞いてもらわなきゃいけないの」

「分かりました。待っていて下さい。すぐに行きます」

「わかったぁ〜」


 鼻歌を歌いながら、足をブラブラさせて国語の教科書を眺めている光様。殺人的な可愛さだな。
 さぁ、サラダはできた。グラタンもあとは焼くだけ。デザートは食堂でテイクアウトしたものが冷蔵庫にある。夕食の準備は完了だ。
 手を洗い、エプロンを外して、光様が座られているソファに並んで座る。光様のたどたどしい音読が始まった。


「さくらの花がさくと……ひと……ひと……?」

「どこですか?」

「ここ」

「あぁ、『ひとびと』ですね」

「人々は……さけ? をぶらさ、げた、りだ……んごを食べて、花の、下を、歩いて……?」

「どれ?」

「ここ」

「あぁ、これは難しい漢字だ。『ぜっけい』と読みます」

「ねぇ〜そーちゃん。おひざだっこして? そーちゃんもずっと本を見てて?」

「あ……はい、わか、りました」


 光様は私の膝の上に座った。本を一緒に見るためだ。あ、おしり柔らかい……とか変なことを考えるんじゃない。
 手のやり場をどうすればいい? 光様のお腹を回してもいいのか?いや、だめだ。それはさすがに。
 ……あー、集中できない。


「そーちゃん?見てる?」


 見てますよ。見ていますとも。
 あなたのサラサラで綺麗な色の髪の可愛い後頭部を。


「すみません。どこからですか?」

「ここだよ〜。読むよ? これ、はうそ、です。なぜ、うそかと……」

「……『申しますと』」

「もうしますと、さくらの、花、の下へ、人がよ、り、……」

「……『集まって』」


 うーん、漢字の読み云々ではなくて、スラスラと読むことができていないな……。可愛いけれど。たどたどしいのがまた可愛いけれども。
 やはり何か本を読むのを勧めようか。小説でなくても構わない。漫画でも十分に語彙力は上がる。賢二に何か漫画を買うよう言っておこう。


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