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「あっ! そーちゃーん!」
初等部の校門で待っていた光様が私の姿を見つけて走り寄ってきた。
「お待たせしました。さぁ、行きましょうか」
「うんっ!」
私、光、賢二の3人は以前と同じように車に乗り込んで、高等部へと向かった。そして高等部に到着すると、賢二を車に残し、私と光様は車を降りた。
「賢二、あとは任せなさい。また迎えの者と共に来るように」
「うん。連絡して。光様、楽しんできて下さいね」
「うんっ! けんちゃんまたねぇ〜ばいば〜い!」
笑顔でブンブン手を振って車を見送る光様。賢二が乗る車を見送ったあと、私の部屋に向かった。
「広いねぇ〜そーちゃんのおへや〜」
「えぇ。1人には十分すぎる程の広さです。光様、そこのソファにでもお座り下さい。飲み物をお持ちします」
「は〜い! ありがと〜」
私はリビング奥の対面式キッチンの中に入った。
まずい……何かまずいぞ。いっぱいいっぱいだ。私の部屋に光様がおられる。ソファに座っている。足をブラブラさせて鼻歌を歌っておられる。
あぁ、早くオレンジジュースを持って行かなければ……。平常心を保つんだぞ宗一郎。いくら2人きりだろうと落ち着いて接するんだ。
「お待たせしました、光様。オレンジジュースです」
「ありがと〜! あのね〜ぼく宿題があるんだ。そーちゃんおしえてくれる?」
「えぇ、もちろん」
私は光様の隣に座った。
光様は黒いランドセルから計算ドリルを取り出して開いた。
「かけ算がわかんないの」
「あぁ、2年生からはかけ算とわり算が始まりますね。……九九は覚えましたか?」
「九九、一の段と五の段しかおぼえられないの……」
「では私が九九表を作りますよ。全部覚えられるまで表を見てやればいいんです」
「ほんとっ? ありがと〜そーちゃん」
私はパソコンを起動して九々の表を作り始めた。これができるまでの間、光様は手持ち無沙汰だな……。
「宿題は算数だけですか?」
「あとはねぇ、国語の本読みと〜漢字ドリル」
「では、私が表を作り終えるまで漢字ドリルをやっていて下さい」
「は〜い!」
……光様、一生懸命やられているが、書き取りが埋まる気配がないな。漢字が苦手なのか?
しかし漢字を教えるというのは難しいことだ。九九同様、覚えてもらうしかない。読書を勧めてみようか。
「むぅ〜……う〜ん……」
九九表はできたが、漢字ドリルが終わるのを待った方がいいだろう。
先に夕食の準備を始めようと、私は立ち上がった。
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