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昼食後、始業式の打ち合わせ、入学式の片付け、始業式の準備を終えて、各自、自室へ戻った。
私の部屋は不快極まりないが『姫の間』と呼ばれる1502号室だ。代々、副会長は姫の間、会長は王の間が宛行われる。
部屋に入り、オートロック独特のジーッという音が止んだ瞬間、ブレザーの胸ポケットにある携帯が震えだした。
「圭吾様か? ……光様!?」
また光様からメールがきた。嬉しい! こんな風にコミュニケーションがとれる日がくるなんて!
『おへんじおそくてもきにしないよ。そーちゃん、おへんじありがとう。うれしかったよ。ぼくもおへんじのしかたがわからなくて、おそくなってごめんね。学校でなにかあったらそーちゃんとけんちゃんにいうね。それから、おにいちゃんとそーちゃんに会いたくなったらむかえに来てくれるんだよね。じゃあこれまでよりいっぱい会えるんだよね?』
ふふっ。また可愛い文面だ。私にも会いたいと思って下さっていることが何より嬉しい。
『なにかあった時はわたしにも言ってくださること、約束ですよ? いっぱい会いましょう。たくさんあそびましょうね。わたしは光さまと毎日会いたいくらいですよ。』
これくらいは許される範囲かな? 毎日会いたい『くらい』と濁しているのがまた……私らしくない。このような濁した文面は嫌いなのに。
制服から普段着に着替え、リビングのソファに座って新入生の資料を眺めていると、また携帯が震えた。
『うん、約束ね。そーちゃんもぼくをむかえに来てくれるの、約束だよ? いっぱいあそぼうね。ぼくもそーちゃんに毎日会いたいな。ぼくそーちゃんやさしいからだいすきだもん。』
『そーちゃんやさしいからだいすきだもん』
『やさしいからだいすきだもん』
『だいすきだもん』
『だいすき』
「だぁぁ!」
そういう意味じゃない。決してお前が思っているような意味じゃないぞ、宗一郎。
…………落ち着け。
いつもの平常心を取り戻せ。返信はそれからだ。変な文面を送りかねん。
……とりあえず保護だ。
「ハァ……」
……情けない……。
『はい、約束です。光さまの所へすぐに飛んでいきますよ。ありがとうございます。わたしも光さまが大すきですよ。』
変じゃないな。
…………よし、変じゃない。
「……顔が、ニヤける」
こんないいことがあっていいものだろうか……。
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