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 入学式が始まり、式の進行を私たちは座って見ていた。新入生の興味は数々の祝詞や教頭、校長の無駄に長い話にはない。滅多に姿を現さない理事長や、教師陣の脇に控えている我々生徒会にあった。
 そして、教頭の口から生徒会の出番が告げられると、新入生のボルテージは一気に上がった。


「それでは、生徒会より新入生へ祝いの言葉を贈ります」


 教頭の紹介でまず銀次が立ち上がった。舞台へと歩いて行くその姿は先ほどまでの馬鹿さ加減からは想像もできないくらい堂々としたものである。
 マイクの前で一礼し、にこりと口角を上げるだけで、高校生男子とは思えない甲高い歓声が上がった。中等部でも高等部生徒会の人気は高かったらしい。
 続いて幸介が舞台へ上がれば、今度は野太い歓声。幸介はニコニコを笑顔を振り撒き、小さく手も振っている。
 悠仁が挨拶をするときも同様だ。キャーキャー、ワーワー。銀次様ー。幸ちゃーん。悠仁様ー。うるさくて敵わないが、これが我々の日常なのである。

 私は背が低いわけではない。華奢でもない。女性的な顔をしているわけでもない。しかし、私に対する歓声というのは、なぜか幸介と同種だ。
 同じ男から、女性の代わりのように見られる。偏見は無いが、私自身に向けられるとやはり心底不快で、どうしても、光様に対する私の想いの卑しさを実感させられる。


「生徒会副会長の大木宗一郎です。新入生の皆さん、ご入学、おめでとうございます。高等部からは勉強が難しくなるため、楽しいことばかりではありません。しかし、生徒会で主催するイベントで少しでも息を抜いて、また頑張る意欲をもっていただければと思います。我々生徒会は、あなた方生徒みなさんの生活を全力でサポート致しますので、困った事などがあれば、気軽に生徒会へ申し出て下さい。以上です」


『俺と付き合ってくださぁぁい!』
『大木先輩を愛しすぎて困ってまーす!!』
『マジ付き合ってくれぇぇ!』


 そんな声が聞こえてくるが、誰がお前らなんかを相手にするか。と言ってやりたい。ついでに光様のように可愛らしい性格になってから出直せとも言いたい。出直されても、受け入れることはないけれど。


「それでは最後に、生徒会長、桜井圭吾くん。お願いします」

 という教頭の声は途中で掻き消された。『桜井圭吾』という男の人気の凄まじさには毎度驚かされる。講堂が揺れたのではないかと錯覚するほど、ドッと爆発的な歓声が上がった。
 圭吾様がステージに現れるとそれはもう騒がしかったが、圭吾様がマイクの前に立ち、一礼された途端にピタッと静かになる。全員がその声を聴こうと真剣だった。


「新入生の皆さん、入学おめでとう。高等部生徒会長の桜井圭吾です。高等部の印象はどうですか? 同じ敷地内とはいえ、中等部と高等部は特別な事情がない限りは行き来することはできない決まりです。まだどこも見ていない子ばかりかもしれませんね。これからこの高等部で過ごし、設備や制度などで改良点があれば、生徒会へ。皆さんが過ごしやすい学園に改善していきたいと思います。これから始まる高校生活を素晴らしいものにして下さい。以上です」


 挨拶を終え、舞台から降りる圭吾様を止めようとする声もまた、とても大きかった。
 圭吾様は学園内で別格の存在。日本屈指の財閥、桜井の嫡男。金のある家の者しか入学できないこの学園の中でも、並べる家柄といえば、宝生くらいのものか。
 家柄も頭脳も容姿も、圭吾様には誰も敵わないのだ。


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