06
ダラダラと歩く銀次を連れ、講堂のステージ裏に行くと、生徒会書記である坂元幸介がやって来た。
「あぁ〜やっときたぁっ。銀ちゃんったら遅い!」
出た。今日も花背負って小走りで。どうすればあんなに自分を作れるのか、大きな謎である。
「遅くねーって。間に合ってるよ。逆にこんなに間に合ってる方がすごいっつの」
銀次が幸介に真顔で言った。
変な威張り方する奴だ。いつも遅刻している自覚が、一応はあるのか。
「宗ちゃんに起こしてもらったくせに偉そうに言わないのっ」
「はーい、バカとブリッコがケンカ始める前に役員集合しろ」
圭吾様に呼ばれ、我々役員4人がそばに集まった。
「圭ちゃんヒドイよ。ブリッコじゃないもんっ。銀ちゃんはバカだけど」
「『もんっ』てとこがまずブリッコなんだ。ブリ幸介とバカ銀次、黙れ」
「俺まだなんも言ってないんですけど。バカじゃねぇって反論できないから考えてたとこだったんですけどー」
「もー話進まないじゃん。バカ銀ちゃんうるさいのっ」
また騒ぎ出した。
この2人はいつもこうだ。
「お前ら……」
「圭吾様、私が」
私は幸介と銀次を端の方へ連れて行き、黙らせた。
「わ。鉄拳制裁だ……痛そー……」
生徒会副会長の神宮寺悠仁はそれを見て、暢気に呟いている。
「じゃあ話始めるぞ。10分後、13時に入学式が開式する。いま新入生は外で待機中だ。司会進行は予定通り教頭がやる。俺達の仕事は、新入生への挨拶だけだ。入学式が終わったら、明日の始業式のことがあるから、生徒会室に集まるように。以上」
「はーいっ。了解です。挨拶まで先生たちの横で待機してたらいいんだよねっ?」
「あぁ。もう復活したのか。くれぐれも静かにしとけよ、ブリ幸介とバカ銀次」
「……圭吾様、お気持ちは分かりますが、それを言うとまたうるさくなるかと」
「宗ちゃんってばぁっ、僕たちそんな単純じゃないよっ」
「そうだぞー! そんなんでうるさくしねーよー」
「銀ちゃんはうるさーいっ」
「お前もうるせーよ!」
ほら騒ぎ出した。
いつになったら黙るんだ……この2人は。
「ねぇ圭吾……、俺は……?」
幸介と銀次がギャーギャー言い争いをしているのはいつものこと。どうでもいいのか、元から感情の起伏が乏しい悠仁は全く気にしていない素振りで、圭吾様に問い掛けた。しかし、言葉少なすぎて何が伝えたいのか圭吾様には分からないらしい。
「なんだ?」
「おそらく、ブリ幸介とバカ銀次のようなあだ名は自分にはないのか? と言いたいのだと思われます」
「うん……それ……」
「あぁ、お前はボーちゃん」
圭吾様はバッサリと言い捨てた。
それを聞いた幸介と銀次が言い争いをパタッとやめ、今度はボーちゃんについて騒ぎ始める。
「あははっ! ひーちゃんってばボーちゃんだってっ」
「ボーちゃん……」
「ぴったりじゃん! だっせー! ……ってなんでちょっと嬉しそうな顔してんの!?」
本当に……うるさい。
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