05
数日後。新年度を迎え、入学式の日の朝。宝生学園高等部の寮15階、特別フロアの一室。寺門銀次の部屋に私は来ていた。
「おい、銀次、もう入学式に間に合わなくなるぞ。起きなさい」
生徒会会計を務めている銀次はめっぽう朝が弱く、今日もいまだ夢の中であった。大事な式典の前に起こすのはいつも私の役目だ。
「……今日、誕生日だから欠席させて……」
銀次は掛け布団を頭まで被った。私は即座にその布団をはぎ取る。私だって暇ではない。こんなことに時間を割く気は毛頭なかった。
「誕生日だろうが何だろうが式典は休ませない。大体その言い訳は去年もしただろう。なぜ今年は通用すると思うのかが分からない。そもそも、今日は悠仁の誕生日だ」
「悠仁の誕生日は俺の誕生日みたいなもんだろ。休ませて」
はぎ取られた布団を取り返し、再び頭まで被る銀次。ここまでしても銀次の目は一度も開いていない。しかし、私も負けじとまた布団をはぎ取る。
「休ませないって言っているだろう。早く起きなさい」
生徒会役員が式典を休んでいい訳がないだろう。全く、毎度毎度寝坊ばかりして。
「はいはいはいはい。分かったよもー。ほんとにだれー? 俺の部屋の合い鍵勝手に作って宗に渡したの。ありえないんですけどー」
やっと観念して目を開け、起きあがった銀次。私も一緒に寝室から出る。
「そんなことできるのは圭吾様だけに決まってるだろう」
「でたよ、暴君」
歯磨きをしながら、げんなりといった面もちで呟く。
「寝坊しないならこんなことを圭吾様は命じないよ」
そもそも圭吾様の言いつけでない限り、こんな面倒なことを私がするわけがない。
「俺の血圧いくらだと思ってんの? こんな朝早くから活動すると思う方が間違いなの」
「もう昼だ」
歯磨きを済ませ、顔を洗い、制服に着替え終わった銀次。本人は準備完了とばかりに靴を履いているが、その頭には、寝癖。
しかし、あえて突っ込むまい。いつもただの寝癖頭なのに『素敵なヘアースタイル』と馬鹿な生徒に騒がれてる奴なのだから。
「じゃあ行くぞ。新入生に生徒会役員の紹介があるから、何か一言考えておくように」
「あーもークソめんどくせー……」
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