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 数日後。新年度を迎え、入学式の日の朝。宝生学園高等部の寮15階、特別フロアの一室。寺門銀次の部屋に私は来ていた。


「おい、銀次、もう入学式に間に合わなくなるぞ。起きなさい」


 生徒会会計を務めている銀次はめっぽう朝が弱く、今日もいまだ夢の中であった。大事な式典の前に起こすのはいつも私の役目だ。


「……今日、誕生日だから欠席させて……」


 銀次は掛け布団を頭まで被った。私は即座にその布団をはぎ取る。私だって暇ではない。こんなことに時間を割く気は毛頭なかった。


「誕生日だろうが何だろうが式典は休ませない。大体その言い訳は去年もしただろう。なぜ今年は通用すると思うのかが分からない。そもそも、今日は悠仁の誕生日だ」

「悠仁の誕生日は俺の誕生日みたいなもんだろ。休ませて」


 はぎ取られた布団を取り返し、再び頭まで被る銀次。ここまでしても銀次の目は一度も開いていない。しかし、私も負けじとまた布団をはぎ取る。


「休ませないって言っているだろう。早く起きなさい」


 生徒会役員が式典を休んでいい訳がないだろう。全く、毎度毎度寝坊ばかりして。


「はいはいはいはい。分かったよもー。ほんとにだれー? 俺の部屋の合い鍵勝手に作って宗に渡したの。ありえないんですけどー」


 やっと観念して目を開け、起きあがった銀次。私も一緒に寝室から出る。


「そんなことできるのは圭吾様だけに決まってるだろう」

「でたよ、暴君」


 歯磨きをしながら、げんなりといった面もちで呟く。


「寝坊しないならこんなことを圭吾様は命じないよ」


 そもそも圭吾様の言いつけでない限り、こんな面倒なことを私がするわけがない。


「俺の血圧いくらだと思ってんの? こんな朝早くから活動すると思う方が間違いなの」

「もう昼だ」


 歯磨きを済ませ、顔を洗い、制服に着替え終わった銀次。本人は準備完了とばかりに靴を履いているが、その頭には、寝癖。
 しかし、あえて突っ込むまい。いつもただの寝癖頭なのに『素敵なヘアースタイル』と馬鹿な生徒に騒がれてる奴なのだから。


「じゃあ行くぞ。新入生に生徒会役員の紹介があるから、何か一言考えておくように」

「あーもークソめんどくせー……」


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