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 サトシは病院内のホスピス病棟に移った。最期の時は、もうすぐそばまで迫っていると訪れる度に思わせられる。


「サトシ、入るぞ」

「隆さん! いらっしゃい! 待ってましたー!」

「……こっちを、だろ」


 サトシがいるベッドに買ってくるよう頼まれていた新作ゲームを投げた。


「へへっ。バレた?」

「バレバレだっつの。普段は何時に来れるかなんて聞かないくせによ」

「もー待ち遠しくてさ」

「ゲームが、な」


 サトシはいそいそと袋から取り出して、ケースを開き、説明書を読み始めた。
 ……俺はゲーム以下かよ。


「隆さん」

「あん?」

「毎日来るの、負担じゃない? 本当は忙しいのに無理して……」

「ねーよ。俺がお前に会いたいだけ。お前は俺よりゲームのがいいらしいけどな」

「そんなわけないって分かってるくせに」

「わかんねー」

「隆さん」

「んだよ?」

「抱きしめていい?」


 少しだけ両腕を広げて、俺の答えを待つサトシ。俺は何も言わずに、サトシの肩に顔を埋めた。

 ベッドより少し低い丸椅子に腰掛けている俺が、ベッドの上で体を起こしているサトシに抱きしめられると、まるで俺が甘えているようだ。
 少し体裁が悪くて、でも居心地が良いサトシの腕の中。

 俺はここに、いつまで……?


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