04
サトシは病院内のホスピス病棟に移った。最期の時は、もうすぐそばまで迫っていると訪れる度に思わせられる。
「サトシ、入るぞ」
「隆さん! いらっしゃい! 待ってましたー!」
「……こっちを、だろ」
サトシがいるベッドに買ってくるよう頼まれていた新作ゲームを投げた。
「へへっ。バレた?」
「バレバレだっつの。普段は何時に来れるかなんて聞かないくせによ」
「もー待ち遠しくてさ」
「ゲームが、な」
サトシはいそいそと袋から取り出して、ケースを開き、説明書を読み始めた。
……俺はゲーム以下かよ。
「隆さん」
「あん?」
「毎日来るの、負担じゃない? 本当は忙しいのに無理して……」
「ねーよ。俺がお前に会いたいだけ。お前は俺よりゲームのがいいらしいけどな」
「そんなわけないって分かってるくせに」
「わかんねー」
「隆さん」
「んだよ?」
「抱きしめていい?」
少しだけ両腕を広げて、俺の答えを待つサトシ。俺は何も言わずに、サトシの肩に顔を埋めた。
ベッドより少し低い丸椅子に腰掛けている俺が、ベッドの上で体を起こしているサトシに抱きしめられると、まるで俺が甘えているようだ。
少し体裁が悪くて、でも居心地が良いサトシの腕の中。
俺はここに、いつまで……?
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