03




「もう、帰って? 俺、隆さんの顔見てたら辛くなる」


 無理に笑おうとするサトシの顔が、少しずつ赤みを帯びていく。潤んだ目が、本当に辛いんだということを俺に伝える。


「サトシ……」

「ほんとに楽しかった。だからもう……満足した」


 たった16歳で、もう生きられないという未来しかないサトシ。
 本当に、俺はここを出て行くしかないのか?
 俺は……。


「俺はお前に、また病気と闘えなんて言えねぇよ。……でもよ、これで終わるのは嫌だ」

「……」

「俺といるのは、辛いか?」


 黙って頷くサトシ。


「俺は、お前といられない方が辛い」


 なんつー勝手な言い分だ。
 治る見込みがない病気なのはサトシ。これから何の希望を持てないのもサトシ。一番辛いのはサトシなのに……。


「ずっと一緒にいよう」


 自分の望みを抑えられない。サトシの方がよっぽど大人だな。


「いられないから……っ、辛いんじゃん! 俺は、もうすぐ……」

「じゃあ、それまで。お前と一緒にいさせてくれ」

「隆さん……」

「……な? 頼むよ」


 ぐしゃぐしゃに歪んだ顔。その涙は辛いからってだけじゃないよな?
 俺はサトシの頭を包むように抱きしめて、もう一度言う。


「ずっと、一緒だ」


 俺の背中に回った腕がその答え、だろ?


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