09




 俺が風呂を上がると、サトシは髪も乾かさずにテーブルの前に座っていた。


「湯冷めすんぞ。髪濡れたままじゃねーか」

「あ、忘れてた」

「俺が乾かしてやるよ」


 ドライヤーを手に取り、ベッドに腰掛けた。そして、右足で床をタンタンと踏んだ。


「おら、ここ座れ」

「うん」


 サトシが立ち上がって、広げた俺の足の間に座った。


「おい。なんでこっち向きなんだよ」

「いいじゃん。隆さんのこと見ときたい」

「……照れんべ」

「照れた隆さんとかレアだよね」

「うっせ」


 サトシの顔面に熱風を当ててやった。


「うっ!! 隆さん!」

「ははっ! ブッサイク!」

「隆さんっ」

「悪かったって。じっとしろ」


 サトシの髪を乾かしながら撫でた。やっぱり見た目通りフワフワの猫っ毛だった。


「おし! 乾いたぞ」

「ありがと」

「じゃ、寝るか」


 ドライヤーを脇に置いて、布団に入った。サトシは座ったまま、俺の方を見ていた。


「サトシ、寝るぞ。布団入れよ」


 サトシが立ち上がって、ベッドに上がろうとしたところで、大事なことに気が付いた。


「あ、ワリ。電気消して」

「あぁ。そうだよね」


 俺、真っ暗じゃねぇと寝れないんだよな。あるよな、そういうの。


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