02
「最近さー、すんげぇ忙しくてっ! もぉマジあの社長は俺をどんだけ働かせりゃあ気が済むんだ!」
「郁巳、俺今から仕事だから話は晩メシ食いながらでも聞くわ。いつもの店で7時でどうだ?」
「おっけーい! じゃまたあとで!」
電話を切って、車を発進させた。軽快に会社へと走らせる。
郁巳は、明るくて面白くて、かなりバカなオサルだけど、いい奴だ。
中学も、高校も、大学も同じ。偶然か必然か、中高はいつも同じクラスだった。大学は同じゼミ。
こんなにも長く一緒にいるんだから、男同士で付き合うってどんなもんなのか聞いときゃよかったな。
郁巳に何て話そうか考えている内に、なんとなく仕事が終わって、会社を後にした。
また待ち合わせの店まで車を走らせる。
郁巳とメシを食うときによく行く居酒屋だ。サトシと同居する前は、1人でもよく行っていた。
「やっぱ焼おにぎりかねぇ」
マジでうまいし、安いし、大将は同い年で気のいい奴だし。まぁ、ちょーっと気になる所があるとしたら、なんか柄の悪そうなのがちょっと多め? ってことくらい。
店の前の駐車スペースに車を停めて、中に入った。
「おぉ! やっぱ隆か。車見てそうちゃうかと思いよったんや。久しぶりやんけ」
「おいっす。最近一緒に住み始めたやつがメシ作んの上手くて」
「なんやなんや恋人かぁ?」
「まぁ、んなとこ」
カウンター席に腰掛けて、メニューに手を伸ばした。
「あ、そうだ。今日は郁巳も来るからさ、いつもの頼める?」
「ホンマか! ちょお、お前バナナ買うてきてくれへんか。超特急で。頼むわ」
「うっす!!」
大将は柄の悪そうな奴にバナナを買いに走らせた。命令された奴が少し嬉しそうだったのは気のせいか?
「郁巳来るんやったらバナナないとうるさいからなぁ」
「なんか……すんません」
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