01
付き合っている、ということになるんだろうか。
俺たちの関係は。
「今日は俺、帰り遅くなるから、晩ご飯自分で作ってね?」
「分かってるよ。んじゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃい。仕事頑張ってね!」
「おう」
付き合う、をとばして夫婦にでもなった感じだ。
あの日以来、変わったことは何もない。たまに手を繋いで眠るくらいだ。ベッドに寝る俺と、床に敷いた布団で寝るサトシが繋いでも、朝には解けてるんだけど。
普通は、……いや男同士で付き合ったことなんかねぇから『普通』がわかんねぇけど……。
普通、恋人同士というものは一緒の布団で寝るものなんじゃなかろうか? そう思ってんのって俺だけ?
でも、海から帰ってメシ食って、俺が風呂からあがった時には、サトシの奴いつも通り床に自分の布団敷いてたしな。一緒に寝ようぜ、とか誘うのもなんか違うような……。
何このモヤモヤ感。
「あーあっ!」
ため息なのかなんなのか判別しがたい声を出して、愛車に乗り込んだ。
エンジンをかけて発進しようとしたその時、携帯が鳴った。電話をかけてきた相手を確認して、思わず笑みがこぼれてしまう。
「もしもーし」
「たーかーしーくん! あーそーぼっ!」
「いーいーよ。久しぶりじゃん。郁巳」
電話をかけてきたのは、中学時代からの親友。五十嵐郁巳だった。
これは天の思し召しだ。
サトシのことを相談しろっていうことだ。うん、そうに違いない。
郁巳は男と付き合って、もう10年になる。
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