07
「ずっとうちにいろ。このまま」
それが、俺の答えだった。
「……うん。ずっと……いたい」
そう言ったサトシの声は、明らかに震えていた。
「おい? なんで泣くんだよ?」
「ずっと、隆さんのそばにいたいよ……っ」
俺はサトシを引き寄せて抱きしめた。
「いればいい。お前1人くらい、余裕で養ってやれるぜ?」
「やだよ、そんなの。俺だって働く」
サトシの声がほんの少しだけ明るくなった。
「高校も行ってねぇくせにか」
「バイトだってなんだってするよ」
「いいって。お前は家にいて、美味いメシ作って待ってろ」
「やっぱご飯しか……」
「それでお前が笑ってくれてりゃあ言うことなしだな。最高の家庭だ」
サトシの腕が、俺の背中にまわった。
「……うん。任せてよ」
「俺が仕事でいない間、1人で寂しいお前のためにペットでも飼おうか」
「いらない。隆さんがペットに夢中になったらやだし」
サトシから少し身体を離して、顔を覗き込んだ。
「お前もしかして、束縛するタイプ?」
「さぁ? そうなのかな」
「いや、まぁ、いいけどよ。……帰るか! 帰ってお前のメシが食いてぇよ」
「もー、俺はご飯しか価値ないわけ?」
「お前知らねぇの? 心を掴むにはまず胃袋からってな。美味いメシ作ってくれる嫁さんのところには、旦那はまっすぐ帰るんだよ」
「……年寄りくさ」
笑いながら、俺たちは車へと今度は手を繋いで歩いた。
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