01
「お、うまいな」
「そう? よかった」
サトシが作ったのは肉じゃがと味噌汁と酢の物。それに炊飯器で炊いたメシ。久々に食べる家庭の味になんだかホッとする俺。
「味噌汁もうめーし、最高だな、おい」
「隆さん、親父くさいよ」
「うっせ。お前が作ったメシのせいだ」
「和食、好きでしょ?」
知ってるよ、とでもいうようなサトシの口振り。
「あん? なんで知ってんだ?」
「え? あ、なんか、そんな気がした」
「ふーん? まぁ、和洋中で言えば断然、和だけどよ」
俺の言葉に微笑むサトシ。なんだか、懐かしいものを見るような目で俺を見てくる。
「なんだよ?」
「なんでもない」
釈然としなかったが、俺はそんなことはすぐに忘れて、メシに夢中になった。
それからもサトシが俺を懐かしむような目で見ることが、度々あった。
俺は、その度になんだか切ないような、寂しいような思いを抱いている自分が不思議だった。
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