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「あ、もしもし母さん? 今ちょっと話せる?」
「怜央から電話って珍しい。何かあったの?」
「いや、うん。あの……今度の月曜さ、予定ある? 紹介したい人がいて、父さんと母さんに挨拶がしたいって言ってくれてるんだ」
「嘘、あんたついに捕まえたの? やるわね」
「え……?」
「竹下くんでしょ?」
「えっ!?」
「えぇ? まさか別の子?」
「……いや、竹下さんだけど」
「びっくりさせないでよ、もう」
いやいやいやいや、『びっくりさせないで』はこっちの台詞なんだけど。何でそんな当たり前みたいに竹下さんの名前が出て来るんだよ。
「俺が竹下さんのこと好きだって知ってたの?」
「ずっと那央くんから聞いてる」
「は? 那央から? てか、ずっとって……ずっと!?」
「何も心配しなくていいから、普通に連れて来な。お母さん達の気持ちの準備はずいぶん前から出来てるよ」
「……うん、ありがとう」
「月曜に帰るの? 泊まってく?」
「え、っと、竹下さんに聞いてからまた連絡するけど……泊まるってうちに?」
「あんたの部屋に布団敷いたら寝れるでしょ。晩ごはん食べてたら遅くなっちゃうだろうから、泊まっていきなさいって言っといてよ」
というやり取りがあったことを、竹下さんに伝えた。なんかうちの親って普通じゃないかもしれない。こんなにもあっさりと受け入れられるものなんだろうか。
「あっさりじゃなかったのかもしれないよ? れおが俺を想っててくれた年数分、ご両親も気持ちを整理してたんじゃないかな? 笹川くんのおかげだね」
「那央の……」
「れおの家族はみんな、れおの気持ちを受け止めて認めてるってことだよね。俺も認めてもらえるように頑張るよ」
ちょっとだけ泣きそうになってしまった俺に気付いたのか、信号で止まった時に頭を優しく撫でてくれた。そして、空気を変えるように違う話題を振ってくれる。
「昨日の内に何店か不動産屋に連絡してみたんだけど、男同士でルームシェアだと受け入れてくれるオーナーって少ないんだって。でも、れおのお母さんの感じだったら保証人になってもらえるかもしれないし、頼んでみてもいいかもしれないね。支払い能力があるっていう証明なら、俺の通帳でも十分だと思うんだけど」
「俺の母親は自営業なんで微妙かもしんないっす。父親も半分主夫みたいな感じだし、どうなんだろ。協力はしてくれると思うっす」
「とりあえず、不動産屋で聞いてみよう。一応、いくつかピックアップしてもらってるから」
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