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後期のテストとレポートラッシュが終わって、明日からはまた長い春休み。以前までの長期休暇と違うのは、竹下さんと俺が、こ……恋人同士という夢のような関係性に変わっていること。
大学のカフェの窓際で軽い食事を摂りながら、竹下さんが外を通ったりしないかと期待しながら眺める。関係が変わっても、やることは全く変わってない俺。今でも姿が見れたらラッキーっていう感覚は変わらず、自分から話しかけることにはすごく勇気が必要だ。
そういえば、春休み中に竹下さんに誘ってもらえたら嬉しいなと思っていたけれど、いつまでもこんな受け身のままじゃ呆れられてしまうのだろうか。俺も竹下さんを楽しませてあげられるようなプランを考えて、誘ってみるべきなのかな。
そんなことを考えていたら、電話が鳴った。竹下さんからだった。
「はい! 雪田っす!」
「なんか元気だね。今日ってこれからどんな予定? 今どんな感じ?」
電話の向こうで柔らかく笑っているような竹下さんの声。あーその顔まじで見たい。
「今日は17時からバイトっす。今は大学のカフェで軽く飯食ってて、時間潰してバイト行くつもりっす」
「17時か……俺もそこ行くから、ちょっと時間もらえる?」
「了解っす!」
まさか会えるとは思ってなかった。竹下さんみたいにさらっと、俺も誘えたらいいのにな。時間もらえる? なんて、何年かかっても言えそうにない。
「れお、お疲れ」
「お疲れ様っす、竹下さん」
「それ晩メシ?」
「感覚的には、おやつっすね。バイト終わったら晩メシ食べるんで」
おやつ……と小さく呟く竹下さんはきっと理解ができないだろう。竹下さんは食べなくても別に平気な人だから。
「で、なんか俺に用があったっすか?」
「ああ、あのさ、れおが今住んでる部屋の家賃って、バイト代で払ってんの?」
「いや、家賃は親が払ってくれてるっす。あと水道代とか、光熱費も。バイト代は食費とか遊びとか、服とかに使ってますね」
「そうなんだ。じゃあ、そんなに悪い話じゃないと思うんだけど……俺が住んでる部屋もうすぐ更新でね、更新料払うくらいなら引っ越そうって思ってるんだけど」
「あ、それいいと思うっす」
「広い部屋かりて、家賃折半して俺と一緒に住まない?」
「…………えっ」
「嫌かな?」
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