4(完)




 後日、俺は竹下をファストフード店に呼び出した。竹下から頼まれたことを果たすためだ。


「すみません、待たせちゃって」

「そんな待ってねーよってか、まだ時間なってねーし。お前何も頼んでねーの?」

「あ、いや、一応三木さんに会ってからと思ったんで」

「別に気にしなくていいのに」


 すでに食べ始めている俺を見て、『じゃあ俺も頼んで来ます』と言う竹下は少し申し訳無さそうで、ユキと竹下って二人とも当たり前に気を遣う性格同士だから疲れないのかな、と思った。
 俺は小野さんに気を遣うことってあんまねーなっていうか、小野さんも俺に気を遣うってことあんましてねーからお互い様だろ。お互い様ってことは、お互いに気を遣う者同士ならそれはそれで心地いいのかな。 俺としては何も考えなくても一緒に居られる方が楽だと思うけどな、とか口に出したら余計なお世話って絶対言われそうなことを考えていた。


「それで、今日はあれですか? こないだお願いした件」

「おう。ユキと話した」


 竹下は緊張とも期待とも取れるような絶妙な顔をして、手に持っていたハンバーガーを置いた。


「あいつ、童貞なんだって」

「え、はい」

「当然だよな。初恋がお前だっつーんだから。あの純情君が下半身だけは別ってこともあり得ないだろうし」

「でしょうね……」


 惚れてなきゃ、セックスなんてできない。それがユキ。感情なんか無くてもセックスはできる。それが竹下。女の子全員大好きだからセックスしたい。それが霧島。それらの考え方について間違ってると思わないし、理解もできる。だから、何の気なしにに言ってしまったが、竹下の複雑そうな顔を見るといらないことを言ってしまったなと後悔した。でもとりあえずそれは流す。


「でもあいつも男だから。溜まるもんはたまには出さなきゃ、だろ?」

「……まあ、想像は出来ないですけど」

「お前一筋な純情君のオカズってなんだろうな?」


 一瞬、眉間に皺が寄って『不愉快』と書いてあるような顔になる竹下だったが、ふと何か思い当たったようにゆっくりと俺の目を見た。


「もしかして……俺、ですか?」

「そうだったら、どう思う?」

「え、いや嬉しい、けど俺でってどういう……」

「それはユキにしか分からないことだろうけど、でもお前に性的な魅力を感じてるってことだろ。自信持っていけ。ユキもお前と同じ気持ちだよ」


 ユキにとっては竹下には知られたくない情報だったろうけど、これで二人の関係が上手くいくなら許されるか? まあこれは、俺と竹下だけの秘密ってことで。
 すまん。許せ。


end.


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