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竹下から相談を受けた翌日。運良く、部室でユキと二人だけになった。唐突すぎるかもしれないが、またすぐ誰か入ってくることももちろんあるから、直球で話を振った。
「で? 竹下とはうまくいってんの?」
「はい! 俺めちゃくちゃ幸せっす!」
弾けんばかりの笑顔で言い放つユキ。そりゃそうだろ。ずーっと何年も片想いしてきた、それも男の竹下と付き合うことになってユキが幸せだと言わないはずがない。
「お前らって二人でいる時はどんな感じ?」
「俺はもういつも、わー! って感じっす。常に幸せメーター振り切ってるっつーか、竹下さんと恋人として一緒にいるんだーって思ったらもうまじで舞い上がりますね」
「竹下は?」
「竹下さんはいつも通りっす。でもなんか二人だけだったら少し距離が近いかな。それでまた舞い上がっちゃうっす、俺は」
お互いがお互いのことは『いつも通り』に見えてんだなー。でもその舞い上がってるのがお互いから見て『いつも通り』なんだろうな。たぶん。
「キスとかしてんの? 羨ましいとか言ってただろ。前に」
「え! あ、あの、えと……はい……」
真っ赤。照れすぎ。キスくらいで真っ赤になってるとやべーぞ。竹下はセックスしてぇって思ってるぞ、おい。
「その様子じゃ、ユキからはしてそうにねーな?」
「俺からなんて! 恐れ多いっす! そんなこと、俺なんかが竹下さんにするなんて……考えられないっす!」
「いやいや……何言ってんだ、お前は」
「だって、竹下さんっすよ!? 竹下さんに俺からキスって……ないっすよ!」
「竹下からされて嬉しいだろうが、お前」
「当たり前じゃないっすか」
「竹下も同じだろ。お前からされたら嬉しいに決まってる」
キョトン、とした表情になるユキ。『え? そうなの?』って感じの顔。竹下に好かれてるって自覚はないのかよ。あんなに優しくされて、あんなに明らかに特別扱いをされたら、ちょっとは自惚れるだろ、普通は。
「お前そんな調子でセックスとか出来んのかよ」
「あ、それは考えたことがあるんすよ」
今度は俺がキョトンとする番だった。
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