5(完)




「俺だってれおが高校生の時どんなだったかとか知りたいし、もっと早く仲良くなれてたらよかったのにって思うよ」

「え、と。じゃあ、もし俺が、高校の時に竹下さんに声を掛けてたら……仲良くしてくれてたっすか?」

「たぶんすぐに好きになってた」

「え!」

「で、すぐに手を出して、嫌われてたんじゃないかな。堪え性のないガキだったし、俺」


 雪田が何も望まずに遠くから想うだけで幸せそうに笑ったり、寂しくて辛くて顔を歪めたり、そんな姿を見ていたからこそ、俺は雪田を強く想うようになったし、俺を想ってくれていたということが、奇跡のように思えた。
 地元から離れて、自由になって、友達と呼べる奴が出来て、そして雪田を好きになった。いろんなことがあったからこそ、俺はこれからずっと雪田と歩いていきたいと思える人間になれたんだと思う。
 雪田と出会ったのは、今の俺だからよかったんだ。違うタイミングで、違う出会い方をしていたら、今日のこの日は無いし、この先の人生も無い。そんな風に思う。


「見てるだけでいいとかって言ってさ、れおが俺を想ってくれてた期間があったから、拗れて執着してくれてるのかもって思うんだ。高校の時に一緒に過ごすことはできなかったけど、だからこそこれからを大切にしていけると思うし。……ちょっと何言ってんのか自分でも分かんなくなってきたけど。とにかく俺は、この先れおといられたらそれでいいんだ。これから何十年って間にれおのこと全部知っていきたいって思ってる。だから、ずっとそばにいて」


 グダグダと意味の分からないことを言って、最終的に『そばにいて』なんて、懇願してしまった。雪田のことになると、とことん格好がつかない。情けなくて、嫌になる。だけど、そんな俺を見つめる雪田の目が好意に溢れてるから、もうなんかどうでもいいやって気持ちになる。雪田が好きだと言ってくれるなら、どんな俺だっていい。


「俺ね、竹下さんを好きじゃない俺って考えられないんっすよ。例えば、いつか竹下さんが俺に飽きたとしても、俺はずっと好きなんだと思うっす。だけど、今のこの瞬間に、竹下さんがこれから先、何十年も俺と過ごしたいって思ってくれてるってことが幸せっす。できたらずっとそう思ってもらえるように努力するっすけど、でも、今の俺がすげー幸せなのは、竹下さんのおかげっす。竹下さんが、俺を幸せにしてくれてるっす」


 俺の葛藤を見透かしてるみたいに、俺の欲しい言葉をくれる。今、雪田は俺のそばにいて幸せなんだろうかと自問することがこの先何度もあるだろう。でもきっと俺が不安になるたびに、雪田は笑って幸せだと言ってくれる気がするんだ。
 そうやって生きてく。これからずっと。
 雪田が隣にいて、毎日が穏やかで、ちょっとしたことが楽しくて、嬉しくて、幸せで仕方ない。そんな風になるって思うんだ。


end.


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