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「俺さ、たぶん初めて会った時から、れおのこと好きだったんだと思う。初めてって言ってもサークルのチラシ渡した時のことだけど」


 ガバッと身を起こしてベッドの上から俺を覗き込む雪田。そのまま落ちてこないか心配になる勢いだけど、落ちてきたら落ちてきたで抱き締めるしそれはそれでいいな、と思う。


「お、覚えてくれてるんすか! チラシ、俺にくれたこと」

「うん。れおが言った言葉も、そん時の顔も、ちゃんと覚えてる。だからきっと、れおは最初から俺の特別だったんだよ」

「俺、あん時……竹下さんがチラシ配ってんの見て、声が聞けないかなって思って、ただそれだけで近寄ったんっす。そしたら俺にチラシくれて、初めて竹下さんと会話して、まじで……俺、嬉しかったんすよ」


 ああ、それで。チラシ一枚渡しただけのことで、嬉しそうに笑ったあの時の雪田を思い出す。ヘニャっと笑ったあの顔に、俺は一瞬で気持ちを持って行かれた訳だけれど。あれが俺にしか見せない、俺のための特別な顔なのだとしたら、俺が惚れたって仕方ない。


「俺、れおの笑った顔好きだよ」


 そう言うと、雪田は照れて耳まで顔を真っ赤にする。


「照れた顔も好き」

「もう! 竹下さんっ」

「そうやって怒っても、結局可愛いだけのとこも好き。耳まで真っ赤で、手も震えてるし、すげー可愛い」

「ちょ、まじで、もう……!」

「いつも思ってた。可愛いってよく言ってたと思うけど、でもちゃんと、好きだよって気持ちも込めてれおに言えるのが嬉しい」


 顔を真っ赤にして、目まで潤ませて、照れてるのと感激してるのがありありと伝わるような雪田を抱き締めないなんて無理だな。と、自分の中で結論を出し、繋いだ手を引いて腕の中に閉じ込める。


「……っ、竹下さんって、お付き合いすると、こ……こんなに甘い感じの、人なんすね」

「こんな感じの俺は嫌?」

「竹下さんのこと、知れば知るほど好きになって……困るっす」

「俺は全く困らないけど。ねえ、もっと好きになってよ。まじで、どうしようもないくらい、俺のことを好きになって」


 もう二度と、この手を離す気はないから。絶対に逃がしてあげられないから。俺なんかのそばで幸せだって感じられるように、いつまでも好きでいてほしい。


「もう、なってるっすよ。どうしようもないくらい、竹下さんが好きっす。……分かってるでしょ? 俺、一回も喋ったことすらない人を、大学まで追いかけてきてんすよ? 普通に引くっすよね」

「引かないよ。嬉しいだけ」

「高校ん時も、ストーカー紛いのことしてたんすよ?」

「購買で同じジュースと在庫残ってるパン買うんだっけ。確かに俺、いつもりんごのジュース買ってたな、懐かしい」

「気持ち悪くないんすか? いつも見てたこと」

「全然? 羨ましいなーとは思うけど」

「うらやましい?」


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