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「……俺って今、竹下さんのものになれたっすか?」
何その可愛い質問。やばい。何この子。可愛すぎんだけど、どうしたらいいの。
「うん。俺も、れおのものになった。でしょ?」
「……何だこれ、もう夢でも何でもいいや。幸せすぎる……!」
俺はこれがもし夢だったら、目が覚めた時に自分がどうなるか分かんねーな。どこからが夢だったのかって全力で悩む自信がある。
「れお。俺、れおともっと話がしたい」
「はい。俺もっす」
話している内に寝てしまっても大丈夫なように、雪田を風呂に行かせた。その間、雪田の部屋で一人になった俺は、いけないと思いつつも部屋にあるものを見て回りたい気持ちを抑えられなかった。もちろん、何かに触れたり、見えない範囲にあるものを出したりはしないけれど。
そうして見て回っても、特に目新しいものは無かった。誰かをすぐに迎え入れられる部屋の、それも見える範囲に、何か特別なものがある訳ないか。と、少し残念な気持ちになった。たぶん俺は期待していたんだ。高校の時から俺を好きだったと言う雪田が、このプライベートな空間に、俺を思わせる何かを置いてくれているんじゃないかって。例えば、写真とか。
「お待たせしましたっす」
「ううん、全然。それなりに楽しんでた」
「楽しんでた?」
「うん。れおは、俺のこといつから好きだったの?」
「えっ!」
「高校の時、としか聞いた覚えがないから」
「……分かんないっす。気が付いたらもう、好きで。ていうか……竹下さんに、俺、好きな人の話したこと……すげー、恥ずかしくて、忘れて欲しいっす……っ」
真っ赤になった顔を俯いて隠しながら、たどたどしくそんな可愛いことを言う雪田に、なんて言ってあげるべきなんだろう。今、俺の口から出そうな言葉は『可愛い』しかない。顔を隠したって、真っ赤な耳は隠せていないのに。可愛くて可愛くて仕方ない。なんでこんな愛おしい子が、俺なんかのことを好きだと言ってくれるんだろう。幸せすぎて目眩がする。
「じゃあ、俺の好きな子の話もしようか」
「……え」
「何でちょっと不安そうな顔になってんの。れおのことに決まってるでしょ」
「なんだ、そっか」
途端にホッとしたようにヘニャっとした顔になる。また抱きしめたい衝動に駆られたけれど、それはやめてお互い布団に入った。ベッドの上に寝ている雪田の腕を降ろしてもらって、手を繋いだ。寝て起きてもこのままだったら、きっと最高の目覚めだろう。なんて、くだらないことを考える。
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