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 思えば、たった半年のことだった。雪田を好きになって、世界が変わったみたいな日々が、たったの半年。6ヶ月。まじかよ、信じらんねーっていうのが本音。もっと、すげー長く感じた。
 じゃあ、雪田が俺のことを好きでいてくれた年月は、どんだけ長かったんだろうって思った。何ていうんだこういうの……とにかく嬉しいし、幸せなのは間違いない。

 ぎゅーっと雪田を抱き締めたまま、そんなことを考えていた。なんかもう、離したくないし、帰したくないし、明日とか来なくていいし、この瞬間がずっと続けばいいのに。
 チラ、と雪田の背で腕時計を確認する。23時半を少し過ぎている。今、雪田に時間を意識させると終電あるから帰るって言い出しちゃうよなーとか、でも電車で帰らせるのは無いとか、つーか帰らせること自体が無いとかって思う。


「……あのさ、れお」


 ちょっと声が掠れた。たぶん俺、緊張してる。軽く咳払いしながら、雪田の返事を待つ。


「はい?」


 結構軽めの返事が返ってきた。いっぱいいっぱいなの俺だけかよ。


「今日、泊まってくれない? 帰したくないんだけど」


 俺の肩に埋まっていた顔が、心底びっくりした! っていう表情をしてこちらを向く。アワアワと言葉にならない声を口から漏らしている雪田はとんでもなく可愛くて、いっぱいいっぱいなのは俺だけじゃなかったと安心した。


「俺またソファで寝るからさ、だから帰んないでよ。一緒にいたい」

「それなら俺がソファで!」

「駄目だよ、そんなことさせらんない」

「俺だってこんな真冬に、申し訳ないっす」


 じゃあ、二人で一緒にベッドで寝ちゃおうか。そう言葉にして伝えても、抱き合うだけで精一杯な現状では、そこに淫靡な響きが漏れることは無いだろう。雪田とのそういう行為を一切考えていないとは言わないが、少なくとも今日は、ただそばにいたいだけだ。


「あの、じゃあ、俺ん家に来てくれないすか? 俺ん家だったら客用の布団が一組ありますし」

「いいの?」

「もちろんっす。……俺も、まだ一緒にいたい、っす……」


 消え入りそうなくらい小さな声は、それでもしっかりと俺の耳に届いた。顔に熱が集まってる感じがする。きっと今、俺の顔は赤くなってる。赤面するなんて、生まれて初めてなんだけど。


「じゃあ風呂入って、明日の準備するね。ちょっと待ってて」


 風呂入るって理由でもなきゃ、抱き締めてる雪田からいつまでも離れる気にならない。明日の準備をちゃんとしてないと、大学サボりたくなる。雪田までサボらせる訳には行かないけど、それすら強請りそうな自分が怖い。


「れお、明日何限から?」

「……1限っす」

「さすが一回生、だね。逆によかったよ」


 3限とかって言われたら、2限サボってた。絶対。


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