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「で、どうだった? 映画」


 面白くはなかった。映画の内容の感想としてはその一言。でも雪田と手を繋いで観られたという点では最高だった。ただ手を繋いでいるだけで、あんなに満ち足りた気持ちになれるなんて思いもしなかった。


「俺まじ感動しちゃって涙ぐんだっす!」


 まじで? どこで? 何それ。涙ぐんでる雪田見たかったんだけど。
 つーか、あれに感動できちゃう恋愛観ってこと? 俺もああいうの見て勉強した方がいい? そしたら俺のことちょっとは意識してくれたりすんの?


「三木も鼻すすってたよなー」

「うるさいです。そういうの普通言います? 頭わいてんじゃないですか」

「何だよもー可愛いな!」


 何で今の返しで『可愛い』になんの。明らかに悪口じゃん。俺がもし雪田に頭わいてるとか言われたら……うわ、まじ言われたくねー。確かに頭はわいてるけど。映画館で思わず手を握っちゃうくらいに自制効かなくなってるけどさ。


「た、竹下さんは、どうでした?」


 どもった。『た、竹下さん』だって。何それ可愛い。
 あれかな? 映画観てる間、俺が雪田の手を握ってたから聞きにくかったりしたのかな。手を繋いだこと、雪田はどう思ってる?


「何であの女があの男を好きになんのか分かんない。男が女の方を好きになんのは分かるんだけどね。だから何つーか、分かんないなーって思ってたら終わった」

「男の子の方は、かっこ良くて頭良くて、困ってる時に助けてくれて、いいじゃないっすか」

「顔と頭が良くてもさ。大体困るような状態になったのだって男のせいばっかだったでしょ。自分がモテんの分かってて、いい気になって遊んでるくせに、特定の女を無駄に構うから他の女に妬まれんだよ。俺だったらあんなの近くにいられたらやだわ」

「あの女の子を好きになってからは一途になって、他の女性と遊んだりしなかったじゃないすか」

「……じゃあさ、過去にどんだけ遊んでようと、誰かを好きになってから一途になったら、雪田はそいつを誠実な奴だって思えんの?」


 俺が過去にどんな汚いことをしてきたか知っても、今の俺がそれを悔いて、改めたなら、雪田は認めてくれんの?
 俺は雪田を好きでいる資格ある?


「誰かを想う気持ちを知って、その人を大切にしようって思えたんだったら、過去のことなんか関係ないと思うっす。だって、それまでは好きって気持ちがどんなものか分かんなかっただけなんすから」


 雪田の真剣な言葉に、ふわっと心が軽くなったような気がした。


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