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「ユキは映画どのへんの席で見んのが好きなんだ?」
「俺は後ろの方が好きっすけど」
「あー、じゃあ微妙だなー。俺と小野さんは少し前の方が好きなんだよ」
「それなら俺は合わせるっすよ。すごいこだわりがある訳じゃないし」
「いやいや、こうしないか? 俺と小野さんは前の方、ユキと竹下は後ろの方。どうだ?」
わざわざそんなことしなくても合わせんだけど。と、思いながらも竹下さんと2人というシチュエーションに期待しちゃったり。
竹下さんさえ良ければ、俺は、それでも……。
「賛成!」
「俺もそれでいいですよ」
いつから俺と三木さんの話を聞いていたのか、竹下さんと小野さんが俺より先に答えていた。
「ユキは?」
「俺も、それで」
「おっけー、決まり。じゃあ行くか。映画館」
映画館は平日の昼間なだけあって人が多いことはないけど、同年代くらいの若者がたくさんいる気がした。9月だから夏休みの大学生が多いんだろう。俺たちもその口だし。
チケットを竹下さんと小野さんが、飲み物なんかを俺と三木さんが買いに行くことになった。別行動の方が効率はいい。
そしてチケットも飲み物も手に入れて、指定されたスクリーンの座席へ向かった。
「けっこう人多いっすね」
「だね。れお、奥と手前どっちがいい?」
「俺はどっちでも」
「じゃあ、俺が奥でいい?」
「はい!」
竹下さんが座席に座ったのを確認して、俺も隣に座った。小野さんと三木さんが座っているであろう方向を見たけれど、見つからなかった。当然だけど。
それよりも竹下さんとの距離が……近い! 肘置き一つ分しか離れていない距離で、2時間も竹下さんと過ごすなんて。しかも暗くなるし。うわーもう、緊張っつーか、ドキドキしてしまう。
「肘、置かない?」
「えっ、いや竹下さんこそ使って下さい。俺は大丈夫なんで」
「そう?」
「はい!」
ああ。これで肘置き一つ分の距離すらもなくなった。竹下さんの腕と、俺の腕が今にも当たってしまいそう。
まじで俺こんなことばっか考えてて変な顔してねーかな。薄暗くて助かった。けど、暗いから余計ドキドキすんだっての。
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