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俺は決して女性をお持ち帰りしたくて『羨ましい』と言った訳ではないのだが、それを訂正する気はないので適当に話を合わせる。
「連チャンすか。霧島さんの肝臓絶対やばいっすよ。つか今日はガチコンじゃなくて、合コンなんすね?」
霧島さんは男女で楽しく酒を飲むことが目的の飲み会を『合コン』と呼び、本気で恋人を作ることを目的としている飲み会を『ガチコン』と呼んでいる。飲み会セッティング能力の高さで、霧島さんは学内でちょっとした有名人だ。同じ学生から定番の保母さん、ナース、キャビンアテンダント、果てはご年配の女性から元男性まで。その人脈の限りを知らない。
ガチコンに関しては、セッティングしてカップルを誕生させることに達成感を感じるらしく、霧島さん本人が参加することはない。女性が大好きだからこそ、特定の恋人は作らずに遊びたいのだと以前聞かされた。当の本人はそんなだけれど、霧島さん主催のガチコンに参加を希望する男は後を絶たないという噂だ。
「おー合コン合コン。お前ガチコンに誘ったって来ねえじゃん」
「そりゃ、俺は……」
「長年片想いしてる子がいるから、だろ。もーいいっての。そんなの諦めれば? お前のこと眼中に無いんだろ?」
「まあ、はい」
「じゃあもうスパッと諦めて、新しい恋探せよなー」
「そんな簡単な話じゃないんすよ」
霧島さんは呆れた顔でこっちを見ている。諦められるものなら諦めたいと思わないこともないが、片想いのままでも小さな幸せを見出してしまう俺には、この気持ちを捨てることは不可能に思えた。
次に霧島さんから何を言われるだろうかと思っていると、カフェ内の多くの女性の目線が同じ方へ向かって、少し騒ついた。
「お。コウ、こっち」
女性の視線が自身に集まっているという自覚があるのかないのかは分からないが……たぶんないと思うけど……竹下さんは長い手足を少し気怠げに動かして、俺と霧島さんが座っているテーブルに近付いてくる。
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