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「あ、あの竹下さんは、21日で問題ないんすか?」

「うん。俺はいつでも」

「バイトとか……」

「シフト結構自由だし、大丈夫だよ」


 21日に竹下さんと2人で会える! それに来週は一緒に映画! だからこんないいこと尽くしで大丈夫かと、俺の人生この先いいとこ無しの残りカスみたいなものになっちゃうんじゃないのかって心配になるくらい幸せ乱発中だ。


「れおは映画好き?」

「はい! 好きっす」

「一番最近観た映画って何なの?」

「えーっと……あ、あれっす。海上保安官の」

「あー。え、でもそれって結構前じゃない?」

「映画館に行ったのは、それが最後っすね。DVDとかだったら割とレンタルして見てるんすけど」


 そういえば大学入ってから映画館行ってないな。映画館に行こうって誘える奴が思い浮かばないなー、まだ出会って4ヶ月とかだもん。宅飲みしながらDVD見るんならあるけど、映画館はないな。


「じゃあ、れおはどんな映画よく見んの? 好きな映画ってなに?」

「んー……例えばレンタルしに行ったとして、真っ先に見るのが邦画の最新作コーナーなんで。邦画をよく見るんじゃないすかね。でも洋画も見ますし、海外ドラマも見ます。好きな映画は……そうだなー。蝶々効果とか結構好きっす」

「あーそれ俺も見たことあるわ。あれでしょ。日記かなんかで過去変えるやつ」

「それっす! 一回見てから、二回目すぐ見て、『あーここ、こういうことだったんだ!』ってなるようなやつ、俺好きなんすよね。あと……っ」


 そこで、はたと気が付いた。俺なんかの話をずっと喋ってても竹下さんは楽しくないんじゃないか。ていうか、楽しい訳ない。


「れお?」

「あ、すいません。なんかベラベラ喋っちゃって。つまんないっすよね」

「なんで? そんなことないよ。れおのこと知れて俺は嬉しいけど」


 柔らかい表情でそう言ってくれる竹下さん。まじで優しい。いつも気遣ってくれて……きっと今だって俺が話しやすい話題だと思ったからわざわざ振ってくれたんだ。


「竹下さんは、優しいっすね」

「それはどうかな」

「すげー優しいっす」


 竹下さんは困った顔で、でも笑ってくれた。そういう表情一つとっても優しいんすよ。甘い気持ちになるんすよ。あーもう、すげー好き。


「俺のことを優しいって、れおが本気で言ってくれてるとしても、俺は優しくないよ」

「それってどういう……」

「俺がこんな風に接するの、れおだけだから。れおが見てる俺は、れおにしか引き出せない俺だってこと」


 俺は理解できてないってことをモロに顔に出してしまったんだろう。竹下さんは『伝わんないか』と言って、また困ったように笑った。


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