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「邪魔して悪い。けど、聞いてくれ。俺と三木とお前とユキで映画行かないか?」
「映画? そんなの2人で行ったらいいじゃないですか」
「2人で行くのが嫌だって三木が言うだもん。しょーがねーじゃん」
「はい? 何でですか?」
「男同士でデートしてると思われるのが嫌なんだと」
電話の向こうから、三木さんがそこまで言わなくていいと怒鳴っている声が聞こえる。デートしてると思われるのが嫌? 何言ってんだ。そんなこと思う奴そうそういねーだろ。見るのがベタベタの恋愛ものとかならまだしも……。
「映画。なに観るんですか?」
「最近よくCMでやってる少女漫画が原作のやつだってよ」
「なるほど。いつですか?」
「一応来週の水曜のつもりではいるんだけど、お前らの予定に合わせるよ」
「分かりました。雪田に聞いてみます。すぐ折り返すので待ってて下さい」
電話を切って雪田を見ると、口をモグモグ動かしながら、何のこと? というような顔をしていた。それがまた可愛くて、俺の顔は緩んでしまう。
「来週の水曜に、小野さんと三木さんとれおと俺の4人で映画に行かないかって。観るのは、少女漫画が原作のやつらしいんだけど、どうかな?」
「まじすか。CM見てちょっと気になってたんすよ。バイトのシフト確認します」
意外に乗り気だった。そういえば、雪田が普段から映画を好んで観るような性格なのかどうかさえ、俺は知らなかった。雪田の好きなもの、嫌いなもの、そういう基本的なことは何一つとして、俺は知らない。
「あ、夜からシフト入ってるんすけど、それまでだったら全然大丈夫っす!」
「そっか。じゃあ、そう伝えるね」
雪田って大学以外じゃ何やってんだろ? バイトって何だろう? 小野さんに電話を掛けながら、そんなことを考えた。
「午後1時に、中央駅の改札集合だって」
「オッケーっす! じゃあその日を、俺の誕生日の分ってことにしてもらって……」
「しないよ。2人じゃないから、カウントしない。れおが言ったんだよ。俺と2人でって。だから、別の日に2人だけでどっか行こう?」
「あ……はい! ありがとうございます」
「ねえ、雪田は何のバイトしてんの? シフトはいつ頃決まる感じ?」
「バイトは、バーの店員っす。昼間はカフェで、夜はバーになる店なんすけど、俺は大抵夜シフトなんで、基本バータイムっす。シフトは、水曜くらいに次の週のが決まるんで、日曜までに翌々週の希望を出すって感じっす」
「じゃあ、21日休み取れる?」
「はい。まだ間に合います」
「その日に2人で出かけよっか」
「はいっ! 絶対休み取るっす!」
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