17-3




 雪田は一瞬驚いたような顔をして、俺から視線を逸らした。それが少し辛くて、切なくて、俺はまた口を開いた。


「れおみたいに真っ直ぐに、……俺も想われてみたいよ」


 その声は俺が思った以上に切実に響いた。ああ、俺はこんなにも、雪田に想われたいと思っていたのかと、自分でも驚くくらいに。
 そして、俺の方をもう一度見てくれた雪田は、今にも泣きそうな顔をしていた。


「……れお?」

「……俺、全然真っ直ぐなんかじゃないっすよ。ただ自分に嘘を付いてるだけでほんとは、俺のこと見て欲しいって思ってます。ほんとは……俺だって、竹下さんに想われてる人が羨ましいっす。俺が欲しかったっす……その気持ち」


 勘違いしそうになった。雪田が俺の気持ちを欲しがってるんじゃないかって。そんな訳ないのに。
 雪田に想われている女が羨ましくて、羨ましくて……気が狂いそう。こんなにも雪田に想われて、気付かないで、他の奴を好きになって、雪田を苦しめて。顔も名前も何も知らない女に、こんなに嫉妬するなんて。
 なんて、きつい恋なんだろう。


「……あ。えっと……あの、竹下さん今のは……」


 黙りこくってしまった俺に、雪田が何かを言おうとしてくれた瞬間。俺の携帯が鳴った。


「あ。ごめん。音切り忘れてた」

「え! いやそんな全然! 気にせず出て下さい」

「いや、いいよ。今はれおと話してんだし」


 電話に出る気はないけれど、とりあえず誰からの着信かだけは確認してから切ろうと携帯を手に取った。小野さんからだった。


「ごめん。やっぱり出てもいい?」

「もちろんっす。どうぞどうぞ」


 さっきまでのシリアスな雰囲気が嘘のように、明るい表情で雪田はまた肉を食い出した。それを横目に見ながら、通話ボタンを押す。


「大した用じゃなければ即座に切ります」


 そんな俺の第一声に、雪田は驚いた表情でこっちを向いた。そんな顔も可愛くて、思わず笑ってしまう。ああ、駄目だ。顔くらいしか長所が無いのに、きっと雪田には緩みきったにやけ面ばかり見せてしまってる。


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