17-2




「進展っすか……えっと、話をするようにはなれました」

「まじで?」

「はい。自分でもビビってるっす。俺を見て、俺と会話してくれるんすもん。……ヤバイっす」


 その表情が幸せそうで、腹のへんが熱くなったみたいによく分かんない感情が渦巻く。これは怒りか? いや、焦りか?


「眼中にないって話だったのに」

「あー……それはそうっす。変わんないっす。俺はただの後輩で、相手は……好きな人いるみたいなんで」

「好きな人って? 知ってる奴?」

「え? えーっと、そうじゃないかなって思った人がいたんすけど、違ってるかもしんないっす。俺は知らないっす」

「じゃあ、聞いてないんだ?」

「……聞けるわけないっすよ」


 それが雪田じゃなければいい。そんなことを本気で考える俺って、本当に雪田を好きなのかな。雪田の幸せを望んでるなんて、口では調子のいいこと言って、本心は全然違うじゃないか。
 雪田の恋が実らなきゃいいのに。むしろ振られてしまえばいいのに。そしたら、優しい先輩の振りして、甘やかして、そばにいさせて、もっと俺の存在を刻み込める。

 どんだけ自分中心なんだって話だ。


「喋ってみて、どうなの? 見てただけの時と印象が変わったりとかはしない?」

「変わらないですね。あ、いや、俺はもっとドライな感じの人だと思ってたんすけど、実際は想像以上に優しくて、意外に面倒見がいい人なんだとは思いました」

「じゃあ、惚れ直した?」

「はい。何回も」

「そうなんだ。よかったね」


 ……自爆。
 聞いたのは俺だけど、聞きたくなかった。元々すげー惚れ込んでる感じだったのに、さらに何回も惚れ直させるってどんな女だよ。なんでそんな奴がいんの。俺は見たことも聞いたこともないね、そんな女。
 あー、もう嫌だ。すげー嫉妬する。なんで俺って男なんだとかすら考えちゃう。女だったら雪田にアピールできんのにな。あーでも、雪田は結局別の女が好きなんだから、俺が女でも振り向いてはくれないのか。そう考えたら、最初から希望すらない男の方が精神的には楽かも。開き直れるし。


「た、竹下さん、は……どうなんすか? その、好きな人とは」

「俺なんか全然だめ。相手にもされてないよ。そんなの最初から、分かってたことだけどさ」

「え……何でっすか。竹下さんが相手にされないわけないじゃないすか」

「すっげー好きな奴がいるんだって。……見てるだけって結構辛いね。れおはすごいよ。ずっとこんな気持ちでいるんだよね、何年も。……れおに想われてる奴はほんとに幸せ者だね。俺、そいつがまじで羨ましいよ」


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