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『竹下さんのお誕生日2人で出掛ける』

 雪田がお店のボールペンで左手の甲にそう書いた。そして満足そうに眺めている。何でそんな行動に出たのか理解はできないけれど、雪田の一挙一動が可愛くて、なんだか舞い上がるというか、のぼせ上がるというか……とにかく俺の言動が怪しくなる。
 男が男に可愛いって言っちゃうのはどうなんだろう? 正直キモイか。うーん、ないかもなー。失敗したかな。何にせよあのタイミングでウーロン茶を持って来てくれてよかった。

 海へ行った日の夜。雪田は俺に『大好き』だと言ってくれた。それが俺と同じ『好き』じゃないことはもちろん分かってる。翌朝本人に、酔っ払いの戯言だとバッサリ一刀両断されてしまったし。
 だけど、俺のことを少しは特別に見てくれてるという自覚もある。憧れみたいなものがあるとも言ってくれたし、それに、誕生日プレゼントの代わりに俺と2人で出掛けたいって言ってくれたんだもん。俺ってけっこう特別でしょ。

 だから思い切って、クリスマスイヴにデートなんて言ってみたけれど。雪田は思いっきりスルーだし。最後まで『出掛ける』という表現しかしてくれないし。思いっきり空回っちゃったな。
 雪田にとっての俺って、どういう位置にいるんだろう 。


「れお。そろそろ何食べるか考えよっか」

「あ、そうっすね! まだ注文してなかったっすよね」


 注文を済ませて食べ始めてからも、雪田がたまに手の甲に書いた文字をチラッと見て、嬉しそうな表情をするのを俺は見逃さなかった。
 どうなんだろう? 雪田にとっての俺って何なんだろう? どこまで踏み込むことが許されるんだろう?

 雪田に触れたい。
 前に髪を撫でた時は、特に不快そうでもなかったけれど。……もっともっと、雪田に触れられたらいいのに。
 抱き締めたら、どんな感じだろう? やっぱり、ゴツゴツしてんのかな? 手は俺の方が大きいかな。指も、雪田の方が細いみたいだし。指を絡めて、手を繋いだら、どんな反応すんのかな?


「……れおは、最近、好きな奴とはどうなの? 進展とかあった?」


 急に不自然だったかな。こんなこと聞くの。あーもう、なんでもっとちゃんと人付き合いをしてこなかったんだろう。そういうスキルが全く無いな、俺。


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