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3限は全く集中できなかった。
竹下さんは今頃どうしているだろうかと考えると止まらなくて、竹下さんが俺の部屋にいたんだという事実に行き当たって身悶えた。
竹下さんが俺の部屋にいて、俺のベッドで寝ている。俺は竹下さんが寝ていたベッドで寝る。……やべー。
5限が始まるまでの空き時間に大学のカフェで本を読んでる振りをしながら、竹下さんのことばかり考えている。もうとにかく堪らない気持ちになって、幸せいっぱいの溜め息を吐いた。
「溜め息なんか吐いて、どしたー?」
「あ、霧島さん。こんちわっす」
「おー。てかさ、今日コウ見てねえ?」
「竹下さんすか? 今日すか?」
見た。思いっきり。つーか、今日は人生で一番竹下さんと喋ったと思うけど、とりあえず、とぼけてみる。
「うん、今日あいつ2限も3限もサボっててさ。しかも電話も繋がんねーし、このまま5限も来ねえのかも」
「まじすか」
霧島さんは竹下さんと同じ学科で、おそらく学内で一番竹下さんと親しい人。軟式野球サークルという名の合コン大好き集団の中でもピカイチの合コン好き。どんなサークルなのかも知らずに入ってしまった俺もよく参加させられている。
「あいつ昨日お持ち帰りされてたし、まだ寝てるのかもな」
「お持ち帰りすか。羨ましいっす」
俺の言葉を勘違いした霧島さんが、目を輝かせて俺の肩を掴む。
「今日も合コンあるからお前も来い! で、お持ち帰りしろ!」
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