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「で? 憧れの竹下さんとはどうなった?」


 幼馴染みと数ヶ月ぶりに会って、数日の間はお互いの近況とか、家族の話や共通の友人の話をしていたのだけれど。ついに来ましたか。やっと話せますか! いやー、自分から竹下さんのネタ振るのはなんか違うと思って待ってたけど、ほんと長かった。


「聞いてくれ。俺に奇跡が起こった」

「は?」

「仲良くなれたんだよ! 竹下さんと!」

「まじで言ってんの?」

「嘘偽りなく言ってます。2人で遊んだこともあるし、お互いの家に行ったこともあるぜ!」

「……ふーん」


 え、それだけ? それで何をしたとか聞いてくれよ。もっと竹下さんの話をさせろ。お前しか言える奴いないんだから。
 表情からするともう竹下さんの話を聞く気は全くないようだ。メニューを見つめて何を食おうかとしか考えてなさそうな様子にがっかりする。

 子供の頃からの付き合いだ。俺の好きな物も嫌いな物もばっちり把握してくれているのだから、オーダーは任せてしまおうと思い、俺は入り口の方をボーッと見ていた。すると、引き戸が開いて入ってきたのは、なんと竹下さんだった。


「竹下さん! と、小野さん」


 おっと。物凄くおまけ感が出てしまった。『おい、俺はおまけか』と言いたそうな小野さんの表情が何とも言えない。


「あ、そっか。雪田ん家この辺だもんね。すごい偶然だね」


 数日ぶりに見る竹下さんの笑顔。眩しいです。かっこいいです。


「そうっすね! 今日はあれっすか? 前に言ってた、お2人で話したいことがあるっていう……」

「お、おー! あれな! ……そんなことより、一緒にいるのが幼馴染み君? 紹介してくれよ」

「あ、幼馴染みの笹川那央っす。俺と同い年っす」


 言われる前に紹介するべきだったかな? いやでも、わざわざ幼馴染みを先輩に紹介するものか? と、少しだけ疑問に思いつつ紹介する。


「で、こちらがサークルの先輩の小野さんと、竹下さん」


 竹下さんのことは那央も当然知っているのだけれど、しっかりと紹介する。竹下さんからすれば、初対面なのだから。


「初めまして。笹川です。もし宜しければご一緒にいかがですか? 俺達もまだ席に着いたばかりで注文はまだですし。それに、こいつの大学での様子もお聞きしたいですから。こいつの両親からも頼まれているので」

「えっ、まじで? もー、何でもかんでも那央に言っときゃいいってとこあんだよな。うちの親って」

「お前がきちんと電話に出たり、メールを返せば、こういうことにはならないんだよ」

「だーってさー……」

「よーし! じゃあ俺らも一緒に飲もうかな! なっ、竹下!」


 小野さんが俺の言葉を遮るようにそう言った。こちらから誘っておいて、身内ネタをいつまでも先輩達の前で続けるところだった。何て失礼な奴だ。
 小野さんは一緒に飲もうと言ってくれたけど、竹下さんはそれでいいのかな? 俺は結構期待を込めた顔をして、竹下さんの答えを待った。


「そうですね。迷惑じゃなければ」

「迷惑なんてあるわけないっす! じゃあどうぞどうぞ!」


 那央と向かい合って座っていた席から立ち、先輩達に勧めた。そして、俺は那央の隣に座り直した。狙った訳ではないが、竹下さんの正面ゲット! 何だか今日はツイてるなー。


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