13-3
「ユキもモテるけどさー、どっちの方がモテるかって言ったら、竹下じゃね?」
「それはそうですけど、竹下とユキじゃ、質が違うんですよ」
「……質、ですか?」
疑問を口にした俺はもちろん、小野さんも『どういうこと?』という表情をしている。
「例えて言うなら、竹下の方はひと夏の思い出みたいな感じで、遊んでもらえたらラッキーって軽いノリなんだよ。それに対してユキに言い寄る女ってのは、とりあえず今日遊べたら良いっていう感じじゃない。ひと夏どころか来年の夏も一緒にいたいってくらいまじな女が大半だよ」
「あー、なんか分かるわ」
「でしょ」
「竹下は女いらねえっていうのが透けて見えてるからなー。ユキも好きな子がいるから他の女を求めてないってのは伝わってくんだけど、あいつ無駄に優しいし。それでまじにさせちまうんだろ。それも鈍感過ぎて分かってないみたいだけど」
「まー、とにかく何が言いたいかって言うと、お前が頑張らなきゃ何もなんねえってことだよ。相手は好きな女がいる上に、鈍感なくせしてガチでモテる奴だからな」
「え? つか竹下ってユキが好きなの?」
「肝に命じます」
と、小野さんを無視して、三木さんに良い返事をしたものの。
膨らませた浮き輪はじゅんぺーを介して女に取られるし、浅瀬でビーチボールで遊んでも雪田とは別チームだし、なんだかんだで雪田は女がべったり張り付いてるし、俺もそれは同じだしで、全然雪田と話せなかった。
バーベキューにしたって火をおこすのは1回生組がやって、俺はじゅんぺー達と買い出しに駆り出されるし。食い始めたら食い始めたで、雪田はずっと肉を焼くのに専念してて、俺が話しかけに行っても『竹下さんはあっちの涼しいとこでゆっくり食べて下さい。焼けたら持って行くっす。ほら、女性陣がお待ちかねっすよ』と一蹴された。
チャンスなさ過ぎだろ。
しかも、三木さんと小野さんが同情的な感じで話しかけてくるもんだから余計にヘコむ。先輩方は両思いなんだからいいよな。お互い一緒にいたいって心の中では思ってんだもん。片思いの俺とは違ってさ。
「おい、コウ! なんかヤベーことになった」
今の今まで狙っているのであろう女と酒を飲んでいたはずのじゅんぺーが少し慌てた様子でこちらへ来た。見ると、橋本や新見や女共が誰かを囲っている。
「……は? もしかして雪田?」
「なんかヤベーから来てくれ」
なんかヤベーって何だよ。雪田に誰が何したの。俺は焦って雪田の元へ走った。
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