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「聞いてなかった。後輩のことが気になっててさ」


 俺は正直に答えた。さて、雪田が戻って来たらどうやって連れ出そうか。名案は思い浮かばないが、とりあえず持って来た浮き輪を膨らませて泳ぎに誘ってみようと思い、荷物を漁る。
 話を聞いていないと言われても懲りずに隣で喋り続ける女を無視しながら、足でポンプを踏む。座っているので上手く踏めないが、まあいいだろう。


「三木!」


 近くまで戻ってきていた三木さんの姿を見つけた小野さんが立ち上がって駆け寄る。それを目で追いながら、浮き輪を膨らませる作業を続けた。


「どこ行ってたわけ? 三木だけ戻って来ねえから心配したっての」

「ここに戻る途中で地元の友達に会って、ちょっと話してたんですよ」

「三木まで女とどっか行ったんじゃないかと思って、まじで焦った」

「俺までって……あ? ユキがいねえ。まさかユキが女と?」

「うん、どっか行った」


 飲み物を買いに行っただけだし。女は勝手に付いてっただけで、雪田が誘ったんじゃない。むしろ、俺と雪田の間に割り込んできたバカ女さえいなきゃ、雪田は今も俺の隣にいたはずだ。
 雪田の行動に深い意味なんてないんだと自分に言い聞かせるために何度も同じことを考えている。嫌になるくらい女々しいと自分で自分に呆れる。

 三木さんが戻ってきたのに気付いたじゅんぺーが、これからどうしよっかーとかなんとか言いながら、女を全員自分達の方へ集めて話し合い始めたので、レジャーシートに座っているのはついに俺だけになった。
 そんな俺を見兼ねた三木さんが、俺の隣に座りながら話しかけて……というより少し責めるようなニュアンスで聞いてくる。


「おい、竹下。お前なにしてんの?」


 そんなこと俺だって知りたい。何してんの、俺。


「浮き輪を膨らませてます」

「分かっててそういうこと言うな。そんなこと聞いてねーよ。小野さんみたいにしたいって言ったのお前じゃねーか」

「小野さんみたいには絶対するなと仰ったのは三木さんです」

「え? 俺が何って?」


 三木さんの隣に腰を下ろした小野さんが、当然の疑問を口にするが、三木さんの『小野さんはちょっと黙ってて下さい』という言葉で流される。


「お前も、ユキ本人も気付いてないみたいだから言うけど、お前が思ってるよりもユキは女にモテるぞ」


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