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 雪田が飲み物を買いに行くのに女がついて行った。あの女、最初から完全に雪田狙いだったし。鈍い雪田が気付いてる訳ないけど。大体、俺のことだって全く気付いてないもんな。
 じゅんぺーん家が分かんない訳ねえじゃん。一緒に行きたくて待ってたんだよ。なんで少しも疑わないの。……とかって、雪田に苛立つ自分がうぜー。俺が正直に言わないからだって分かってんのに。すげー嫌になる。


「おいーっす。戻ったぞって、あれ? ユキは?」

「飲みもん買いに行った」

「1人で?」

「女と2人で」

「へえ、あいつもたまにはやるじゃん」


 雪田の意思じゃない。あの女がついて行っただけだ。そう言おうとじゅんぺーの方を見たが、雪田に何人分の飲み物を買いに行ったのか電話で聞いた上に、さらに8人分を追加して買ってくるように言っているのだから、いかに自分の雪田への関心が他人と違う部分に向いているのかを実感する。

 何気なくそのままじゅんぺーの方を眺めていると、じゅんぺー、橋本、新見の3人はナンパしてきた女4人と楽しそうに話しているが、なぜか三木さんだけいないことに気が付いた。
 どうやら、俺なんかよりも早くそのことに気付いていたらしい小野さんは、忙しなくキョロキョロとして三木さんの姿を探しているようだ。

 雪田がいなくなった場所に女が2人座って、片方は俺に、もう片方は小野さんに話しかけている。ついでに言うと俺の前にも女が1人立っていて、何を話すでもなく、俺の隣にいる女の話を聞いている。
 傍から見れば、俺は女2人と、小野さんは女1人と話をしているように見えるだろう。しかし、俺は雪田のことが気になってるし、小野さんも三木さんのことがかなり気になっていて、会話など成立していない。楽しげなじゅんぺー達の方とは違って、こっちは2人とも女の存在を完全に無視していた。

 ナンパが目的の奴らと一緒に来たのだから、場の雰囲気を悪くする振る舞いは控えようと思っていた。俺自身の目的が達成されるのなら、とりあえず周りに合わせて、女と喋る努力もしようと思っていた。
 ……んだけど。
 雪田が女とどっか行っちゃうとかありえねーだろ。ついこの間ナンパはどうでもいいみたいなこと言ってたじゃねえかよ。なにさらっと女と2人で抜けてんの。


「ねえ、聞いてる?」


 上目遣いで顔を覗いてくる女がうざすぎる。元はと言えば、雪田との間に割り込んできたこの女が悪いんだ。こいつさえいなければ、雪田が気を使って立ち上がることも、立ち上がったついでに飲み物を買いに行くなんて言い出すことも、雪田狙いの女と2人きりになることもなかったのに。


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