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 三木さんのご実家で水着に着替えて、全員海パンにTシャツで海まで歩いた。みんなで話をしながら歩けば20分程度の道なんてすぐだった。
 そして今、和気あいあいとした道中から一変、俺は少し気まずい状況に置かれている。左隣に竹下さん。右隣に小野さんという先輩達に挟まれ、海水浴場の砂浜で座っているのだ。


「ユキって、どんな女がタイプー?」


 などという突飛な質問まで投げかけられてしまうくらいに、この3人では会話が弾まないのだ。
 そもそも、なぜこんな状況になってしまったのかというと、大体小野さんが悪い。


「よっし。ナンパするぞ!」


 海に着いて、ビーチにレジャーシートを敷き、全員荷物を置いてひと段落。というところで、霧島さんがそう言った。
 霧島さんだけじゃなく、ニーナやモトもナンパ目的で来ているから当然その提案に乗り、三木さんのご実家で三木さんのお母さんに猛烈アピールをかました小野さんを避けるために三木さんまでもが乗ってしまった。

 そこまではいい。問題はそのあと。


「コウとユキはここで荷物番してろよ。お前らだったら座ってるだけで女の子声掛けてくるからさ。可愛い子いたら捕まえといて」

「あ、小野さんもそうしたらどうですか? 顔だけは良いんですから。顔だけは。荷物、お願いしますね」


 というダブルパンチのせいで、今のこの状況が出来上がってしまったのだった。


「……タイプっすか。えー、難しいっすね」

「じゃあさ、このビーチにいる女から可愛いって思うの選ぶってことで。竹下もなー」

「俺もですか? 可愛いとか……考えたこともないんですけど」

「なんかあんだろー? あの子胸でっけーとか」

「ちょ、そんな大きい声で言うのやめて下さいよ。聞こえたらどうすんすか」


 焦る俺の言葉なんて意にも介さない様子の先輩達。霧島さんもだけど、何でこの先輩達はそういうことを言うのに抵抗が無いんだろう。
 幸か不幸か、竹下さんが放った一言で話の流れがガラッと変わる。


「俺は女の身体に全く興味がありません」


 えー? いやいや、え? 竹下さんがそれ言っていいの? 今までどんだけの女性とそういう関係を持ったのかっていう話なんだけど。


「竹下も? 俺も俺もー」


 小野さんは、まあ……合コンでもお持ち帰りなんてしてるとこもされてるとこも見たことないし。三木さんへの感じ見てたら、そうなのかなーって思ったり、思わなかったり。


「実は、俺もっす」


 ちょっと勇気を出して俺も言ってみる。すると、しばらくの沈黙が戻ってきた。そしてやっぱり沈黙を破るのは小野さんで。


「俺らさー、何でここに座ってんだろーな」

「……興味ないから、じゃないですかね」

「あー。なるほど」


 こんな話をしているなんて思いもしていないんだろう。ビーチにいる女性は、先輩達に熱い視線を送っている。
 俺が思っていた海での遊びとかけ離れた状況が終わらない。何でもいいからナンパしに行った組が早く帰って来ないかな、なんて思った。


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