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「えっ! ……と、そうじゃないっす!」
「なにその間」
「いや、えっと、上手く……言えないんすけど、あの……俺のベッドで竹下さんが寝るとか、緊張するっていうか。俺なんかが使ってるきったねーベッドなんか申し訳ないっていうか。なんつーか、今晩寝る時に、布団とか枕から竹下さんの匂いとかしたら、やべーっていうか! とにかく、嫌な訳じゃないっす! ただなんかちょっと、いきなり距離が縮まりすぎっつーか、ほんと意味分かんないと思うんすけど、嫌とかじゃないっす!」
必死に何かを俺に伝えようとしてくれているのだろうけれど、何言ってんのかほとんど分からなかった。
「まあ、嫌じゃないなら、遠慮なく」
「はい! どうぞ! 何時間でも!」
ベッドに横になる。折り畳める構造になっているパイプベッドは、俺の重みでギシッという音を立てて軋んだ。
「雪田はこれからどうすんの?」
「俺っすか? 今から朝メシ食って、今日出すレポートやるっす。あ、竹下さん腹減ってます? 良かったら一緒にどうすか?」
「いや、平気。俺、朝は食えないから。ありがとね」
「そうっすか。あ、あと、俺は3限から大学行きますけど、竹下さんは好きなだけ寝ててもらっていいっすから」
「……鍵は?」
「あ、えーっとスペアあるんで、それで閉めといて下さい」
財布からスペアキーを取り出して、テーブルの上に置く。
「ここ置いときます。お願いします」
「分かった。ありがとう」
「いえ。じゃあ、おやすみなさい」
「……おやすみ」
そう言ってすぐに、俺は寝てしまった。起きた時には雪田の姿はなかった。
代わりに、スペアキーと一緒に、寝る前にはなかった書き置きと、おにぎりと水があった。
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