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「え、何それ。俺、嫌なんだけど」


 そう言ったのは4回生の小野さん。はっきり言って、そう言うだろうと全員が分かっていた。
 何が嫌なのか。それはもちろん3回生の三木さんの隣じゃないことだ。小野さんは三木さんのそばから離れることを良しとしない。


「小野さんの気持ちなんて聞いてません。ていうか、どうでもいいです。俺の家が目的地で、運転手は道を知らない。車にナビも無い。となれば俺がナビをするのは当たり前でしょ」

「だからって助手席じゃなくてもいーじゃん。後部座席からでもナビくらい出来るし」

「助手席の方がやりやすいんで。何でわざわざ小野さんの隣に座るためだけに後部座席に行かなくちゃいけないんですか」

「何でって俺のためでしょ」

「はいはい。もーいいです。あーあ、海着いたら小野さんと一緒に遊ぼうと思ってたんですけど、まじでうざいんでしばらく顔も見たくなくなってきました」

「え、嘘。じゃあ助手席でいいよ。俺、後ろね。モトとニーナと一番後ろに座るから」

「えっ?」


 ことの成り行きを静かに見守っていた俺たち1回生組が声を揃えた。なぜ? なぜモトとニーナ? むしろなぜ俺だけ外されてるんだ? 俺ら1回生3人で後ろに座って、その前に竹下さんと小野さんが2人で座るんだと、勝手に思っていたのだ。


「どうせお前ら3人で固まって座る気だったんだろ? そしたら俺と竹下になるじゃん。180オーバーのデカ物同士でなんか座ってられるかよ。だから、小さいモトと小さめのニーナと俺は座る」

「なるほど。それは俺もごめんですね。その組み合わせには俺も賛成です」


 すぐ小野さんに同調した竹下さんに、また俺たち1回生組が戸惑う。竹下さんって自分の意見を言うような人だったっけ? と首を傾げざるを得ない。


「雪田。俺の隣でもいいよね?」

「それは、はい。もちろんっす。喜んで!」


 よかった、とにっこり笑う竹下さんが眩しい。最近、竹下さんが妙に親しく接してくれるようになった気がする。
 ……なんでだ。こんなんじゃ舞い上がっちゃって、気持ちの整理が付かない。ただの後輩でいなくちゃいけないのに。


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