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竹下さんを好きだと自覚したのは、高校2年の時だった。
自分でこんな風に思うのもなんだけれど、高校時代はそれなりに女子生徒から人気があったと思う。もちろん、竹下さんと比べると天と地ほどの差があったけれど。
ある日、同じクラスの女の子グループに机を囲まれて、なんだなんだと目を泳がせていると、『雪田くんは好きな子いるの?』と聞かれた。それはもう単刀直入に、何の前置きもなく。
当然、俺はなぜそんなことを聞くのか尋ねた。その時の俺は、同い年の女の子に囲まれているというその状況に、正直ちょっとビビっていた。
結局のところ、何人もの女の子から告白をされているのに、特に考えるでもなく、さらっと断りを入れる俺の態度がその子達にとっては不可解だと、そういうことだった。
好きな人がいるのかと聞かれて、なんとなく竹下さんが思い浮かんだ。そういえば、俺はずっと竹下さんを目で追っているじゃないか。わざわざ竹下さんがいるであろう場所に何かと理由を付けては向かうじゃないか。あ、俺って竹下さんが好きだったんだ……と、何の抵抗もなく腑に落ちてしまった。
竹下さんが男だということについて考えてみたのは、好きだと結論付けてからだった。
それからの俺は竹下さんを『好き』というフィルターをかけて見るようになった。自覚があるから余計に性質が悪いのだけれど、本当にストーカーと言われても仕方が無い振る舞いだったと思う。
ずーっと見続けて分かったことだが、竹下さんは女性が好きではない。むしろ、嫌っているようにも思える。かと言って、同性愛者という訳でもない。性的な対象は女性だ。
同年代の女性には極端に冷たい。平気で無視をしたりする。しかし、男友達には優しいので女性からの好感度が下がることはなく、逆に硬派な人だと思われて、高校の時は近寄り難い人扱いになっていた。大学でもそれは大して変わらないけれど。
学校内では手が届かない人として扱われていた竹下さんは、学外では複数の女性と関係を持つような人だった。それに関しては、俺の中で勝手に理由を付けているのだけれど。だって竹下さんは、理由もなくわざわざ人を傷付けるような人じゃないから。
それはともかく。女性嫌いで、それでいて年上の女性と複数関係を持つ竹下さんを見ていたおかげで、俺は早々に気持ちを割り切ることができた。
竹下さんは、真剣に誰かと付き合う気はないのだと。本当に特別な人はできないのだと。
だから俺は、このままずっと、失恋することのない片想いを続けることができる。幸せな気持ちを抱いたままで、竹下さんをずっと見ていよう。
そんな風に思えたのに。そんな風に思っていたせいで。そんな幸せな恋は終わった。
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