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「うわ、すずしー」

「クーラー付けっぱっすから」

「まじで来てよかった。俺ん家に帰ってたらしばらく蒸し風呂で我慢しなきゃいけないし」


 雪田は、あははと愛想良く笑いながら、キッチンや風呂場があるスペースを抜けて、奥の部屋へ行く。典型的なワンルームの間取りだ。


「竹下さん? 上がって下さい」


 雪田の許しを得て初めて、俺は靴を脱いでもいない自分に気が付いた。無意識に遠慮しているのだ。まあ、当たり前だと言えば、当たり前。そもそも本当に雪田と俺は仲が良い訳ではない。
 じゃあなんでいきなり部屋で寝かせろなんて要求をしたのか。……よく分からない。


「……お邪魔します」

「はい。どうぞ寛いで下さい」


 奥の部屋に入ると、これから俺が使わせてもらうのであろうベッドを雪田が整えていた。


「このタオルちゃんと洗濯済みなんで安心して下さい。シーツはすみませんけど、このままで我慢して下さいね。掛けるのはバスタオルでもいいすか? さすがに俺が使ってるタオルケットは……アレなんで」


 そう言いながら、枕にフェイスタオルを被せて、綺麗に畳まれたバスタオルを手渡してくる雪田。真夏に掛けるものなんていらないとは思ったが、一応受け取る。
 普段雪田が使っている枕だと俺が嫌がると思ったのだろうか。シーツもタオルケットも、雪田のものなら別に嫌ではない。小汚い奴の布団は死んでも嫌だけれど。大体、俺がよく知りもしない女とヤることに抵抗がないことくらいは知っているだろうし、他人のベッドだからどうのこうのと気にする訳がないとは思わないのだろうか。
 それとも、逆か? 気を遣ってるように思わせて、実は雪田が嫌なのだろうか。


「雪田って潔癖なの? 枕に俺の汗とか匂いが付くのが嫌?」


 そういう人間だっている。分かっているけれど、なんとなく……雪田に俺を拒否られるのは嫌だと思った。


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