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 中学2年の冬。保健室で寝ていた俺を担任が誘惑してきた。誘惑というと何だか結果的には俺が手を出したようなニュアンスに取られる気がするので、違う言葉にしよう。適切ではないかもしれないけれど、レ○プが一番近い表現だと思う。
 2年の夏から急激に背が伸びて、女子から意識されるようになった。それは担任も例外ではなかったようで、俺はその日を境に卒業するまで何度も何度も担任と寝た。

 初めての時がどのような形であったにしろ、性行為は気持ちいいことだと思っている。だが中学生の俺にとってのそれは、感情や欲求とは全く関係なく、担任の機嫌を取るという目的のためのただの手段でしかなかった。担任に媚を売っておけば進学に有利だという打算の方が大きかった。成績が悪かった訳では無いが、レベルの高い高校に難無く入れたのは、2年3年と担任だったその女のおかげだと思っている。
 そして、自分の外見が使えるという自覚を持ってからは、俺は女を利用することに躊躇しなかった。

 高校に入ってからは、一回りも二回りも離れた女に寄生した。要はヒモ男。働かなくても金を得られた。それも、バイトをしている友人の給料よりも高額が、女と遊ぶだけでだ。

 自分が上の立場にいる、頼られていると感じている女は、簡単に思い通りに動いてくれた。
 金欠だと言えば、いつの間にか財布に金が入っていた。欲しいものがあると言えば、次に会う時にプレゼントだと渡された。一緒にいれば上手いメシも食えたし、一晩泊まれば着替えとして洋服を得られた。

 若くて、顔が良くて、笑顔で愚痴を聞いてくれて、あなたは悪くないよと言ってくれる男の子が、ヤる時には激しく自身を求めて、力でねじ伏せることも出来る男になる。それが、快感だったのだろうと思う。
 俺がそれを演じているだけとも知らずに、俺の言う心の込もっていない『ありがとう』と『ごめんね』と『だいすき』という言葉に気持ち良くなる。
 高校を卒業すると同時に、ヒモなんてもんはやめたけれど、それまでに何人相手にしたかは正確には分からない。今となっては顔をおぼろげに思い出すことが出来る女が数人いるくらい。名前に至っては、完全に無理。

 とにかく高校生の俺は、馬鹿な女って騙されてんのにも気付かないで、ある意味幸せな頭してんなとすら思っていた。罪悪感なんて、これぽっちもなかった。
 雪田と話すようになんなきゃ、未だにひどいことをしただなんて思えなかっただろう。


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