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「いや、好きになっちゃだめだと思うから、好きじゃないってことにしたいんだけどね。でも考えれば考えるほど、そういうことなのかなって思っちゃうんだよね」
「……例えばどんなことを考えるんすか……?」
「例えば、そうだな。一番最近でいうと、眼鏡ってキスする時邪魔なのかなって、その子相手に想像した」
そう。雪田にキスをする自分を想像してしまった。雪田が目を閉じているのが悪い、なんて言い訳にもならない。……決定的だ。唇が柔らかそうだなどと考えてしまう俺ってほんと頭おかしい。
さっきキスなんて気持ち悪いって言ったばかりなのに。言ったばかりだからこそ、逆に考えてしまったのかもしれないけれど。
「キ、スすか……」
「うん。勝手にそんなん想像して俺ヤバイよね。キスしてみたいなんて生まれて初めて思ったし、正直、頭おかしいとしか言い様がない。でもさ、その子が俺だけ見てくんないかなとか思っちゃうから、『好き』ってことなんだよね。これね」
「なんか、竹下さんらしくないっつーか……」
「俺もそう思う。現在進行形で何言ってんの何考えてんのって感じ。なんかもう急速に蝕まれてるよ、俺、ヤバイって」
雪田なんか好きになってどうすんの。
雪田、好きな女いんだよ。っつーか、男だろ。男だよ。男。俺も男。男同士。
希望なさすぎ。始まる前から終わってる。これ以上ない終わりっぷり。
「竹下さんに好かれて、嬉しくない人なんかいないっすよ。竹下さんなら、どんな人でも落とせるっす。自信持って下さい」
「いやー……どうだろ」
雪田は絶対落ちないだろ。逆にそっちの自信持てるわ。
「だって、竹下さんっすよ? 竹下さんに好きって言われて喜ばないなんて、ありえないっす」
「その子に好きな奴がいても?」
「そんなもん乗り換えっすよ」
「もうまじで、すっげー好きでも?」
「即ポイっす」
「そう思う? まじで? 今てきとーに話合わせとこうとかじゃなくて、本気で思ってる?」
「思ってるっす」
おべんちゃらなのか本心なのか全く読めねぇ。ほんと後輩の鑑。
もし、これを本気で言ってるとしたら、ちょっと希望が持てるか……いや、さすがに相手が男だとは、というより自分だとは想定していないから言えることだ。ここで思い切って『自分に当てはめて考えてみて?』と聞くことが出来れば楽なんだけれど。
なんかそれもださいしな……それ言うとたぶんあとで後悔する気がするし。っつーか、何で本人に相談しちゃってんだろ、俺。
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