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 雪田の隣に並んで歩きながら、あくびを何度もかみ殺す。そんな俺に気付いたのか、雪田が笑った。


「そんなに眠いんすか」

「目瞑ったら5秒で寝れそう」

「そういや昨日、霧島さんが合コン行くって言ってましたけど、竹下さんも行ったんすか?」

「あー、なんかいるだけでいいからってまた付き合わされたんだよ」

「やっぱりすか。霧島さんって竹下さんのこと妙に合コンに連れて行きたがるとこあるっすよね」

「数合わせには最適なんじゃん。顔だけで性格悪いから」


 雪田の顔が微妙に曇る。『顔だけで性格が悪い』をどう否定すればいいのか考えているような表情だ。でも、この後輩は先輩の扱いが上手いから、すぐに笑顔を取り戻して耳触りのいい言葉を吐くことができる。


「そんなことないすよ。確かに竹下さんは男の俺から見ても綺麗な顔だと思うっすけどね」

「男が綺麗って言われても、嬉しくないから」


 容姿の優劣なんて、考えたことはない。ペチャクチャ無駄に喋んないのが『いい女』。それ以上もそれ以下もない。『可愛い』なんて感じたことは今まで一度もない。

 何を思って俺に『格好良い』って言うの? 『綺麗』って何だよ? 何と比べてそうなんの?
 それが褒め言葉だって、まじで思ってんの?


「竹下さんは何つーか、アレっすよね。……俺なんかが言っていいか、分かんないすけど、……まじ天然っすよね」

「はあ?」

「あ、不愉快でした? すいません」


 慌てて頭を下げる雪田に笑ってしまう。謝るんなら言わなきゃいいのに。


「なんで? 何で俺が天然だと思うの?」

「えーっと、竹下さんはちょっと自覚なさすぎだと思うんすよ。だって竹下さん、顔だけじゃないんすもん。俺は、竹下さんの優しい口調とか、好きっすよ」


 ほら、気分が良くなった。


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