7-4




「竹下さん。どこ、向かってるんすか?」

「俺ん家」


 駅とは逆方向に歩く俺の後ろで、雪田が驚いている。だって雪田ん家まで2駅あるし、そっからちょっと歩かなきゃいけないし。付いてってあげてもいいけど、俺ん家連れてく方が早い。


「……竹下さん、の家に行くんすか? 今から?」

「うん。俺ん家こっから歩いても10分かかんないから。今日は俺ん家で寝ればいいよ。明日の朝、俺の酒抜けたら雪田ん家まで車で送るから」

「えっ、いや! え!? そんなご面倒をおかけする訳にはいかないっすよ。俺1人で帰れるっすから」

「面倒でも迷惑でもないよ。っつーか1人にさせる方が心配になって嫌なんだって。だから俺ん家来て」

「……まじすか」

「うん。まじ。ほんと俺ん家すぐそこだから」


 雪田が混乱したみたいに『まじか』と何回か言っているのが聞こえる。頭働いてないのかな。そんな具合悪いのかな。
 マンションに着いて、エレベーターに乗った時には、パッと見ただけで分かるくらい雪田の顔色が悪かった。一言も喋らないし、すぐにでも吐きそうな表情になっている。


「結構やばい感じ?」

「……そっすね。結構、やばいっすね。色々と」

「それって寝たら治る感じ?」

「寝れる……のかな、俺……? って感じっす」

「え、やばいね。それ」

「やばいっす。ほんと、何か仕出かしたら申し訳ないっす」

「大丈夫大丈夫。ちゃんと看てるし、俺」

「ありがとうございます……」


 これは寝ずの番だな、と思いながら、家の鍵を開ける。雪田に先に入るように促してから、鍵を閉めてチェーンを掛けた。


- 28 -



[*前] | [次#]
[戻る]


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -