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「竹下さん。どこ、向かってるんすか?」
「俺ん家」
駅とは逆方向に歩く俺の後ろで、雪田が驚いている。だって雪田ん家まで2駅あるし、そっからちょっと歩かなきゃいけないし。付いてってあげてもいいけど、俺ん家連れてく方が早い。
「……竹下さん、の家に行くんすか? 今から?」
「うん。俺ん家こっから歩いても10分かかんないから。今日は俺ん家で寝ればいいよ。明日の朝、俺の酒抜けたら雪田ん家まで車で送るから」
「えっ、いや! え!? そんなご面倒をおかけする訳にはいかないっすよ。俺1人で帰れるっすから」
「面倒でも迷惑でもないよ。っつーか1人にさせる方が心配になって嫌なんだって。だから俺ん家来て」
「……まじすか」
「うん。まじ。ほんと俺ん家すぐそこだから」
雪田が混乱したみたいに『まじか』と何回か言っているのが聞こえる。頭働いてないのかな。そんな具合悪いのかな。
マンションに着いて、エレベーターに乗った時には、パッと見ただけで分かるくらい雪田の顔色が悪かった。一言も喋らないし、すぐにでも吐きそうな表情になっている。
「結構やばい感じ?」
「……そっすね。結構、やばいっすね。色々と」
「それって寝たら治る感じ?」
「寝れる……のかな、俺……? って感じっす」
「え、やばいね。それ」
「やばいっす。ほんと、何か仕出かしたら申し訳ないっす」
「大丈夫大丈夫。ちゃんと看てるし、俺」
「ありがとうございます……」
これは寝ずの番だな、と思いながら、家の鍵を開ける。雪田に先に入るように促してから、鍵を閉めてチェーンを掛けた。
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