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「お! きたきたっ。おーっす、コウ。バイト終わったー? お疲れーい。うーい、んじゃ待ってるぞー」
もし漫画だったら、俺の耳は大きく描かれていて、横には『ピクッ!』とかって効果音が付けられていることだろう。竹下さんからの電話だったらしい。
「よーっし、今からとっておきのイケメンが来るからねー!」
霧島さんの煽りにキャーキャーと盛り上がる女性たち。俺も言っていいなら言いたい。『キャーキャー』。
「イケメンだってー。ほんとかなぁ? ねぇ、今から来る人ってユキちゃんの知ってる人?」
「知ってるっすよ」
「ユキちゃんよりもイケメン?」
「俺なんかと比べちゃだめっすよ。あんなかっこいい人、他に見たことないっすから」
「えー? うっそだぁー」
嘘だと思うなら、その大きな目をひん剥いて見てみればいい。本当だって思うしかないから。現れるのは、本当に綺麗な人だから。
背は177の俺よりも数センチ大きい。体毛は薄め。無駄な脂肪も無駄な筋肉も付いていない均整の取れた身体。
日本人らしくないほどくっきりとした二重瞼に長い睫毛。眉は少し太め。鼻が高くて、唇は薄い。左側の犬歯だけ、少し前に出るように生えていて、笑うと見える。髪は緩いパーマをあてていて、カラーは暗め。
外見的な特徴をズラズラと並べてみても、竹下さんのかっこよさを十分に表すことはできないみたいだ。
……ほら。実物を見れば、知っていたって目を奪われる。
「うわまじ。超かっこいー」
だから言っただろう? かっこいいって。
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